ブラジルのスラム街の子どもたちは、K-POPのコンテンツを見て楽しんでいます。インターネットは、苦しい日常からの避難場所でもあるのだと思います


ルイーザ・アマライ(ブラジル/韓国科学技術院修士課程在学中)

 

ARMYになったのは、2019年、ブラジルの大学を卒業した直後のことです。当時、何をやりたいのかわからず未来に対して不安を感じていた時に、K-POPを聴き、BTSの動画やインタビューを見るようになって。「急ぐことない、ゆっくりで大丈夫」と言われているような気がしたのです。一番好きなのは「LOST」。まさに当時のわたしのことを歌っているようで、進むべき道を見つけた今でも大切にしている曲です。

 

BTSとARMYに興味を持ち、いまは韓国の大学院でK-POPスターのSNSでの活動やファンダムについて研究しています。もともとK-POPや韓国に興味がなかったわたしが夢中になった理由は、ブラジルには彼らのようなボーイグループがいないからです。ピタッと合うダンスやファッション、そして配信されるコンテンツの量がすごい。でも、本気で深くハマった理由は…想像力をかきたてられたためだと思います。新しい世界を知り、新しいことを学んだ。BTSが立ち止まっていたわたしの人生の扉を開いた。世界の問題を身近に感じるようにしてくれた。彼らがそういう話をするから。

クアラルンプール市内のショッピングモールで見つけた、Jung Kookを起用したカルバン・クラインの広告

BTSは、2019年にサンパウロのスタジアム公演をソールドアウトにしたことからもわかるように、ブラジルでも大人気です。ブラジルにはコリア系や日系人などアジア系も多いけれど、それだけではなく、幅広い層のファンがいます。じつは、ブラジルのスラム街にもたくさんのK-POPファンがいるんです。もっとも貧しい地域であるリオのスラムで活動している牧師さんから、子どもたちがK-POPのコンテンツを見て楽しんでいると聞いて驚きました。BTSのバラエティを見て笑顔になったり、TWICEの動画を見て踊ったり。SNSや動画は新しい世界への扉です。インターネットは、苦しい日常からの避難場所でもあるのだと思います。

新しいものに接して、夢を見る。「いつか外国に、韓国に行ってみたい」って。スターは魅力的でカラフルで、わくわくする存在。そして、国を超えて共通する問題について語っている。地球の反対側にいるにもかかわらず、同じ問題を共有しているんです。たとえば映画『パラサイト 半地下の家族』やドラマ『イカゲーム』もそう。BTSも『パラサイト』『イカゲーム』も格差社会の話をしています。わたしたちは、同じように葛藤している。BTSはメンタルヘルスについても語っていますが、格差もメンタルヘルスも、パーソナルでありながら、グローバルな問題なのです。

第4回BTS学会の参加者たち。

前編「【BTS学会】インドネシアのママARMYの80%が「コロナ禍でもBTSのおかげで夫との関係が改善された」!?」>>


文・撮影/桑畑優香
構成/露木桃子