俳優さんとの初キスシーンも、「宝塚と変わらない」

 

——望海さんのキスシーンが衝撃的でした。宝塚とは違ってリアルですから……。

望海 ファンの方はどう感じていらっしゃったのかな。私も退団してから初めてのキスシーンだったので最初は「どうなんだろう」と思ったのですが、やってみると宝塚のキスシーンと変わらないんです。宝塚は様式美として“フリ”で見せますが、気持ちはきちんと入っているので、一緒なんです。だからあまり抵抗はなかったです。あくまで作品の中のサティーンとしてのキスシーンですから(笑)。

——井上芳雄さん、甲斐翔真さんのおふたりのクリスチャンがまったく違うタイプだったので、おふたりと望海さんのそれぞれのカップルを見比べるのが楽しかったです。

望海 おふたりとも毎日自由に演技をされていましたし、私は私で「今日はこんな感じのクリスチャンなんだ!」というのを感じるのが好きなので、それがとても楽しくて。同時に、私も相手にとって常に新鮮でいられるのかなと思いながら演じていました。

 

“息子”になって20年、“娘”に戻る


——『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』の囲み取材のときに、望海さんがセクシーな姿で演じるため、お父様が「2階席からしか観られない」とおっしゃっていたというお話を聞きました。20年間“息子”だった望海さんがようやく娘になったという記事も拝読しました。ご家族にとっても「第二幕」の始まりなのでしょうか。

「第二幕」と題された望海風斗さんの著書。宝塚退団からの激動の日々を綴った。(『望海風斗 第二幕』/日経BP)

望海 はい、本当にそうだと思います。両親は私が宝塚にいるときから、両親なりの応援をしてくれていました。私は男役だったので、実家に戻ったときなど、ふと自分に戻る瞬間はあっても、どこかに男役のスイッチが入ってしまい、ずっと“息子”だったんです。 

でも今は母と買い物に行ったり、家族みんなでご飯を食べに行くとか、揃って出かけるとか、そういう時間が持てるようになったのが楽しくて。小さい頃は父と母がいろいろなところに連れて行ってくれていたので、今は時間ができたら私から誘って出かけています。そういうことができるようになって「私も大人になったなぁ」って(笑)。