「また生まれ変わってもこの仕事をしたい」

 

——「好き」を仕事にすると、仕事になった瞬間、好きだったことが嫌いになったり、好きだったことが義務になって辛くなったりすることもあると思います。Nさんは、好きな演劇や、人を育てることに関わる仕事に就かれましたが、この仕事に就いて良かったと思いますか?

N:すごく楽しい仕事ですし、また生まれ変わってもこの仕事をしたいです。

——生まれ変わっても同じ仕事がしたいと言い切れるって、すごいですよね。

N:多分この仕事をやっていなかったら、私は教師を目指していたと思います。第1志望は教育学部だったので、受かっていたら迷うことなくそちらに進んだだろうし、マネージャーという仕事には出会っていないはず。でも、たまたま第2志望は演劇の専攻だったので、こっちに来ちゃったっていうだけなので。

好きを仕事にするとつらい事もあるんでしょうね。私は元々映画が好きだから、いい映画を観ると、「こんなにいい映画なのにうちのアーティストは誰も出ていない!」と打ちのめされて帰ることはあります。そういうときは本当に悔しいです。うちのアーティストには本当に、いい作品に出てほしいって思うから。

 


覚悟はいるかもしれないけど、ミドル世代も「ウェルカム」!

 

——セカンドキャリアを考えている40代や50代の方も少なくないと思います。セカンドキャリアとして、芸能マネージャーという仕事を選ぶことに関してどう思われますか?

N:私は異業種からの転職は全然ありだと思います。「他業種から来ました」という人は実際にいらっしゃるし、ウェルカムです。逆にこれまで芸能の世界にしかいなかった人にはない視点が絶対にあるから。すごく移り変わりも激しい仕事なので、違う業界の知識やスキルは活かせると思います。

ただ、この業界に入ってきたあと、ご本人が苦労することはあると思います。若い頃から長くやっている人は、やっぱりアーティストと積み重ねてきているものがあります。信頼関係は1日2日では作れないものなので。若い頃からやっているマネージャーの多くは、現場から一緒に苦楽を共にして、その次のステップとしてチーフマネージャーになっていきます。

40代50代から入ると、そういうプロセスとは違う道筋になります。そういう苦労はあると思います。でも、それをミッションと捉えて、「このアーティストをどう売っていくか」と楽しめたらいいですね。


インタビュー前編
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写真・イラスト:Shutterstock
取材・文/ヒオカ
構成/金澤英恵