性欲や恋する気持ちは本来、年齢と関係なく存在するもの

 

閉経は、「次なる性」のはじまりを知らせるサインです。
「年齢も重ねてしまったので、恋愛や性欲は落ち着いてしまっています」という人も多いのですが、性科学の視点では、性欲は食欲と睡眠欲同様に、生来人間に備わっている本能のひとつ。それは「落ち着いた」のではなく、「落ち着くものだ」と、無意識にコントロールされているのではないかと思うのです。

 

たしかに、からだは衰えていきます。けれど、性欲や、恋する気持ちは本来、年齢と関係なく存在するもの。そういう思いを抱いている女性が、いくつになっても女らしさとほのかな色香を醸し出すのではないでしょうか。「いい歳をして」などという、外野の声に惑わされることなく、堂々と自分らしく生きたいものです。

閉経という「次なる性」。
老いて、枯れゆく部分はあれども、それ以上の経験や感性、いい意味での「手放し」も多く学んできたはずです。

もしかしたら、「性」を通じて傷ついた経験と引き換えに、他者への包容力や温かみ、人間としての奥深さも得たのではないでしょうか。その人間味を、どう自分の中で昇華し、どう表現していくのか。それは、女性としての生き方、大人の女性の腕の見せどころでもあると思います。

「もうこんな年齢だから……」とあきらめるのではなく、「私の場合は、どういうふうになっていくのかな?」と、楽しみに待つような、そんなワクワクも、もち続けていきたい、と思うのです。

著者プロフィール
森田敦子(もりた・あつこ)さん

植物療法士。日本における植物療法と性科学の第一人者。サンルイ・インターナッショナル代表。フィトテラピーが日本に根付く20年以上も前に、パリ13大学医薬学部で植物療法を学ぶ。帰国後は植物バイオ研究に関わり、数々の賞を受賞。また、AMPPフランス植物療法普及医学協会認定校「ルボア フィトテラピースクール」の運営に着手するなど、植物療法の普及に努める傍ら、人生100年時代を見据え、産前産後や介護の現場を通じて女性の健康をトータルにサポートする可能性を追求。2022年、世界45の国と地域で刊行されている仏雑誌「ELLE」にて【100 Women CHANGE MAKERS】(エルが選ぶ世界のチェンジメーカー100)の1人として選出される。主な著書に『自然ぐすり』『潤うからだ』(ともにワニブックス)、『感じるところ』(幻冬舎)など。植物のチカラを通して、健やかなライフスタイルを提案するラジオ「森田敦子のLove your life」をPodcastSpotifyAudeeで配信中。

 

『私のからだの物語』
著者:森田 敦子 ワニブックス 1980円(税込)

女性の「性」にまつわる意識を変えたベストセラー『潤うからだ』から6年、森田敦子さん待望の新刊は、女性のライフステージ別に学べる「女性の性」の物語。女性の一生のうち、性にはどのような変化が訪れるのか。そしてどんなふうに対処し、優しく労り、向き合っていけばいいのか。森田さんの豊富な知見を柔らかな言葉と共に綴ります。


写真/Shutterstock
構成/金澤英恵