浮気を許そうとした妻への、夫の無情な回答


結局、篤史さんはすべてを妻に話しました。その前に不倫相手には「妻と向き合うから関係を終わらせよう」と伝え別れたそうです。

どうせ別れるのであれば、なぜそんなことを……と当初は思ってしまいましたが、篤史さんなりに筋を通して家族と向き合うと決断したよう。しかし当然ながら、「実は他に好きな人がいた」と伝えられた妻は激昂。育児と会社経営に専念していた彼女の気持ちを考えると胸が痛みます。

「まさに修羅場って感じでした。案の定、わざわざ伝えてくるなんてあり得ないと言われましたし、相手は誰だとか、奥さんはかなり荒れました。

でも話し合いを進めるうち、僕がきちんと反省して、彼女と別れ、今後はもう一切他の女に目を向けない、しっかり家族に集中して生きるなら許すと言ってくれましたが……」

 

しかし篤史さんは妻の要求に対して、またしても無情な回答をしてしまうのです。

「もちろん妻の気持ちも言い分もわかるし、じっくり考えました。でも、どうしても約束できなかった。そもそも僕の人生だし、そこまで他人が口出しする権利はないとも思って……それを正直に伝えました」

できない約束は、できない。これは篤史さんの信念、ある意味で誠実さなのだと感じます。ですが、夫から突然浮気を告白されたうえにこんな返答をされた妻は、結局「それならもう離婚しかない」という結論に至ったそうです。

篤史さんは家を出ていくことになり、妻は相手の女性に慰謝料を請求しました。

「奥さんとの話し合いが落ち着いて彼女に連絡すると、僕が精神的に不安定な状態だったこともあり、色々と言い合いになり『あなたには幻滅した。もう2度と会いたくない』と彼女にもキツく突き放されて、ひとりぼっちになりました。

これも自業自得なんですけど、家庭も彼女も同時に失ってしまい、すごく辛かった。恥ずかしい話ですけど、子どもみたいに声を上げて1人でわんわん泣いていました」

思うに、このとき篤史さんが2人の女性に期待していたのは、すべてを正直に話すことで嘘のない自分を晒し、そのうえで受け入れてもらうことだったのかもしれません。けれど現実はそう甘くはないですし、女性側の立場を想像してみても、やはり受け入れ難い状況だと思います。

篤史さんはこのとき仕事も手につかず、食事も喉を通らなくなるほど心にダメージを負い、なんとしばらくの間、カウンセリングに通うことになったそうです。