「100歳だからといって100歳らしくする必要はない」。“ねばならぬ”から自由でいる

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タキ どうだろう。女性でも年齢を言い訳にして逃避している人のほうが多いかな? でも母譲りで私は年齢を言い訳にはしない。あとこれはよく言うんだけれど、否定的な3Dは言わないということね。

まさし 3D?


タキ 「だって、でも、どうせ」で3D。けっこう言う人多いでしょ?

まさし たしかに。それは立派だと思う。僕の母は90で亡くなったんだけども、亡くなるまでね、やっぱり見てくれは気にしてたな。最期は施設に入ってたんだけど、それでも、いきなり僕が会いに行くのは嫌がったね。何時頃に行くからって言ってから行かないといけなかった。

タキ うん、身だしなみを整えたい。

まさし そうそう。それで、ちゃんとして迎えないと嫌だっていうところがあったね。

タキ 母もそうだった。母が100歳のときにこう言ったの。「100歳だからといって100歳らしくする必要はない。あくまでも自分らしくしていたいの」。“ねばならぬ”から自由でいないと。

まさし 出た! 加藤シヅエの言葉がもう一つ。

タキ 晩年でも母は、本当に綺麗な肌していたんだけども、一つポイントがあって、これはあなたも今日からできること。朝と晩、蒸しタオルでほんの5秒から10秒、顔を包む。気持ちいいよ。やってごらん。

まさし 蒸しタオルで?

タキ そう、もうただ熱いの。

まさし のっけるの? 顔にのっけるの?

タキ うん。あとはそれで拭けばいい。

まさし 僕ら、熱いタオルを顔にのっけるのは、床屋でヒゲ剃るときだけなんですよ。

タキ それを朝晩、自分でやるの。

まさし 朝晩、自分でやるの?

タキ うん。それで、そのあと、まさし君……。

まさし はい。

タキ はっきり言うけど、もう今からちゃんと何かつけなさいね。

まさし はい?

タキ 保湿クリームでもいいし。何でもいい。

まさし わかりました。

タキ とにかく乾燥がよくないから保湿のためにね。でも、あなた綺麗な肌してるよ。

まさし いや、まあ、僕のことは置いときましょう。

タキ (笑)

 
 

『さだまさしが聞きたかった、「人生の達人」タキ姐のすべて』
著者:加藤タキ/さだまさし 講談社 1870円(税込)

シンガー・ソングライターのさだまさしさんと、彼が長年敬愛してやまない「タキ姐」こと加藤タキさんの対談集。アーティスト・コーディネーターという職業を自ら切り拓いたタキさん自身はもちろん、女性初の代議士として活躍した母・シヅエさんや、オードリー・ヘプバーン、ソフィア・ローレンら海外スターの“素敵”エピソードも飛び出し、読み応え十分。人としての品格を身につけながら自由に自分らしく生きるためのヒントが詰まっています。


構成/さくま健太