誠が前向きに頑張れるのは、具体的な動機があるから

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一人ひとりのパーソナリティが丁寧に掘り下げられ、存在や人生が照らされるからこそ、時代が変わる必要性に説得力が生まれているんです。同性愛や、メイクや可愛いものが好きな男の子は理解できない、という誠のような人たちがアップデートしなければ、実害を被る人たちがいる。その事実があるだけで、時代の変化を「鬱陶しい」と感じるか、「全ての人が生きやすくなるために必要なもの」と捉えるのか。その切実さが全然違うと思うんです。

『不適切にもほどがある!』の脚本家でもある宮藤官九郎さんは、ドラマの公式HPで「不適切に不適切を塗り重ねて生きてきた世代にとって、日々アップデートを強いられる令和はなかなか生きづらい」とコメントしていますが、おっパンの主人公の誠はアップデートを“強いられている”とは感じておらず、前向きにアップデートに励んでいきます。それは、家族や部下たちのためという、具体的な対象や動機があるからかもしれません。

 

「叱ってほしかったんです」に思わず鳥肌

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この二つのドラマを見て、時代の変化の捉え方以外にも考えさせられるのが、世代間ギャップの乗り越え方です。『不適切にもほどがある!』の話に戻りますが、このドラマでは、こんなシーンがあります。前の記事でも触れたように、部下の加賀ちゃん(木下晴香)から言動をハラスメントだと申告された秋津くん(磯村隼人)。その後、加賀ちゃんが秋津くんと話し合いたいと言い出した後、こんなことを言うんです。

「叱ってほしかったんです」
「叱られたことがないんです。一度も親にも、誰にも」

うわー出た出た。このシーン、もう背筋がぞわっとしました。詳しくはこちらの記事に書きましたが、「叱る」は百害あって一利なしの行為。「本当は𠮟るべきだけどハラスメントになるから叱れない」とよく言いますが、叱ることは何の効果もなく、むしろ弊害が大きいので、そもそも不要。でも、いまだに苦痛神話から抜け出せない人たちがいて、叱られてないやつは世間知らず、根性なし! みたいな思い込みから抜け出せない。