しかしながら、人手不足が深刻になり、人件費が高騰していることなどから、一部の加盟店では深夜営業を行うことが難しくなり、本部と加盟店の対立が激しくなってきました。コンビニ・チェーンにとっても加盟店がいなければ商売になりませんから、これまで頑なだった本部も加盟店の柔軟な対応を認めるようになっています。

日本は今後、本格的な人口減少時代を迎えますから、人手不足が今まで以上に深刻になるのはほぼ確実です。

写真:Natsuki Sakai/アフロ

人手が足りない状況で、過重労働を繰り返しながら無理に営業を続けることには弊害しかありませんから、状況に応じて営業時間を短縮するのは妥当な判断だと筆者は考えます。世論も、労働者の環境を最優先し、無理な働き方はやめようという流れになっていることについては素直に評価してよいでしょう。

 

しかしながら、本格的な人手不足社会を乗り切るためには、私たちはもっと意識改革を徹底する必要があります。

多くの人は漠然と「顧客は過度に便利さを追求してはいけない」と考えていると思いますが、朝のコンビニの売上げ減少の例からも分かるように、無意識的に事業者に対して過度な要求を行っているケースはたくさんあります。

政府が進めているキャッシュレス化の動きに対して、現金の維持を求めるのも同じ心理といってよいでしょう。

確かに現金は便利ですが、現金社会を維持するためには、飲食店や小売店は、釣り銭用に常に大量の現金を用意しておく必要があります。この作業に費やされる労働力はかなりの水準となっており、一部の業種では店員さんの過重労働につながっています。銀行も常に現金を確保しておくため、多くの行員を支店に配置しているのが現実です。

このところ、一部の通販事業者は置き配(玄関やメーターボックスなどに荷物を置いて配送終了にすること)を進めていますが、手渡しして欲しいという要望はかなり強いようです。確かに手渡しの方が安心ですが、置き配にすれば、再配達が劇的に減り、配送要員の負荷が減るのは間違いありません。本当に配送要員のことを考えるのであれば、置き配を推進した方がよいのは明らかです。

筆者はどちらかというと、消費者は我慢する必要はなく、高度なサービスが欲しい人は追加で料金を払うシステムにすればよいとの立場です。サービスのあり方には様々な考え方がありますが、労働者の環境を第一に考え、消費者のわがままは抑制した方がよいということであれば、労働量の削減につながる措置については例外なく対応すべきでしょう。
 

前回記事「ベビーカー利用に8割が賛成も「賛否両論」といわれているワケ」はこちら>>

 
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