ふざけ合いーの、からかい合いーの、時には真剣に夢を語り合いーの。そういうクラスでキラキラ輝いている男子を、教室の隅にある黒板消しクリーナーになったぐらいの気持ちで、そっと見守る。それが、僕の推し方でした。

もうね、すんごい平和。こんなに微笑ましい気持ちになれるのは、マザー牧場か推しかっていうレベル。先輩にはちょっと緊張気味の推しが、仲の良い同級生とか後輩にウザ絡みしているときの愛らしさとか、今すぐタイムカプセルに入れて100年後の未来に届けたい。そして、100年後の未来人に「尊い…」って言わせたい。

推し本人のインスタよりも、推しの友達のインスタに推しが出てきたときの方がときめくのはなぜでしょうか。いつまでも絶えることなく友達でいてね、となぜかこっちがふたりの未来を祈ってる。

オカンと名乗るのは、本物のお母様に申し訳ないので控えたいのですが、感覚としてはそれに近い。例えるなら、寮母くらいの立ち位置で、推しと、推しの友達との無邪気なやりとりを眺め続ける。そして、大きくなれよ……といそいそメシを炊く(=課金)。そんな推し方をしてきたオタクにとって、突然のラブシーンは男子校だったと思っていた学校がいきなり共学になった感じ。
 

ドラマ『恋つづ』から考える、推しのラブシーン問題_img0
 

決して女の影が許せないというわけではないのです。ただ、こう、心の準備ができていなかった。ずっと男子として見ていた推しが、男性だったことに気づいたというか。モコモコのニットのセーターが似合うキュートな推しが、脱いだらめちゃめちゃたくましい上腕二頭筋をしていたときの、ありがたいような、いけないものを見たような、あられもない気持ち。それが、推しのラブシーンなのです。
 

 

推しと共にオタクも自分をアップデートするべし


とはいえ、若手俳優を推す以上、ラブシーンは避けては通れない道。ラブシーンなんてやってほしくないと駄々をこねて、推しの仕事の選択肢を狭めるようなことは、オタクとして絶対にしてはいけないこと。

むしろ推しがラブシーンを演じるようになったら、それは自分の推し方もアップデートを図る時期。もう僕は黒板消しクリーナーでも寮母さんでもありません。授業中、ノートに落書きをしているところを、推しから「何それ、クマ?」といきなり覗き込まれ、「違う、ネコだもん」と言い返す、席が隣の女の子へと自分をバージョンアップさせるのです。

そして、ドラマの中のヒロインに自分を投影し、推しとの妄想恋愛を楽しみましょう。そのときこそは満を持して声をあげるのです。

「いいぞもっとやれ」と……!
 

前回記事「荒みがちな心を癒すのは“推しのいる生活”」はこちら>>

「推しが好きだと叫びたい」連載一覧
第1回:あの日“推し”に出逢って、僕の人生は変わった
第2回:荒みがちな心を癒すのは“推しのいる生活”
第3回:ドラマ『恋つづ』から考える、推しのラブシーン問題
第4回:自粛生活では新たな推し=生きる燃料。朝ドラ俳優・窪田正孝の底知れぬ魅力
第5回:こじらせてると解ってる、でも言いたい「推しに認知されたくないオタク」の本音
第6回:「推しの顔が好きすぎて語彙力死ぬ」問題をライターの僕が本気で考えてみた【ライター横川良明】
第7回:やっぱり顔が好き!顔から推しに堕ちたオタクを待つさらなる落とし穴【ライター横川良明】
第8回:SNSで話題の史上最強沼・タイBLドラマ『2gether』の素晴らしさを語らせてくれ
第9回:ナイナイ岡村の炎上騒動から考える「長く愛される推し」に必要なモノ2つ
第10回:転機は高橋一生だった。推しの肌色面積問題、着てる方が好きなオタクの意見
第11回:オタクの心の浄化槽。男子の“わちゃわちゃ”が今の時代に求められる理由
第12回:推しが好きだと叫んだら、生きるのがラクになった僕の話

 
  • 1
  • 2