ただ大事なのは、焦って決めないことです。キッコロさんはまだ50歳ですから、お墓を実際にどうこうするまでにはたくさんの時間がありますし、何よりお墓はご両親だけのものでもキッコロさんだけのものでもありません。ご両親もキッコロさんも知らないところで、誰かがお墓参りに来ているかもしれません。お墓についてよく知ることは、そういった人間関係の紐解き作業でもあります。だからこそ、ゆっくりと時間をかけておこなってほしいと思うのです。

 

それでもキッコロさんは独身でお子さんがいらっしゃらずお墓を継ぐ人がいないとのことですから、遅かれ早かれいつかは墓じまいが必要になってくるのではないかと思います。でないと、いとこの子供……などといった遠い縁の人に墓守をしてもらう、なんてことになってしまうかもしれませんから。今は永代供養など、供養の形はいろいろあります。そしてこれからも、おそらく供養の形は変わっていくし種類も増えていくでしょう。ですからご両親や自分が希望する形を選べるよう、お金を準備しておくことも大事になってきます。

 

ちなみにお墓を移動させたり墓じまいしたりする場合、高額な離檀料を要求されることが時折、問題になります。お寺は檀家に代わって日々お墓を掃除し、先祖の霊にお経をあげて供養をしてくれています。お布施とはそのお礼であり、檀家から感謝の気持ちの表れでもあります。お寺は、そのお布施によって成り立っているのですね。つまり、キッコロさんのご両親もお寺を支えている人たちの一人。だから墓じまいするということは、お寺にとってはそのお布施がなくなり、関係が切れてしまうということでもあります。

離檀料を要求したくなる気持ちは分からなくもありません。ですがこれはあくまでも気持ちの問題ですから、お寺との付き合いを日頃からきちんとなさっていれば、よほどのことがない限り問題になるようなことは少ないと思います。キッコロさんも先々のことを考え、ご両親がされていることを少しずつ一緒にやるようにして、お寺との関係を築いていってもいいでしょう。最近は厳しい運営状態のお寺も少なくないもの。お寺との関係性ができていれば、お寺のほうからも、永代供養などさまざまな提案があるかもしれません。

いずれにしても、お墓に対する思いは人それぞれです。「頻繁にお墓参りをしたいから自分が住んでいるところの近くに移したい」という人もいれば、「遠くて不便でもご先祖様の土地にあったほうがいい」という人もいます。ですから、とにかく焦らずゆっくりと考えてください。お墓のことは、何十年先のことまで見越して決めたほうがいいでしょう。時の経過とともにご両親やキッコロさん自身の気持ちも変わっていくかもしれませんから、むしろ今決めてしまわないことのほうが大事だと思います。
 

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 取材・文/山本奈緒子

 

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