『マイ・インターン』(2015年・アメリカ)

『マイ・インターン』より。 写真:Moviestore Collection/アフロ


人生で感動する瞬間のひとつ。それは、人と人の心が通い合うこと。それも、生きてきた環境も、置かれている立場も、年齢も、性別も、まるで違う人同士が、いつの間にか最高のパートナーになっている。そんな出逢いは、決して多くない。だからこそ、とびきり大切で、とびきり胸を打つのだ。

『マイ・インターン』は、ひとりの男性とひとりの女性が出逢うところからスタートする。男性の名は、ベン(ロバート・デ・ニーロ)。妻を亡くし、男やもめの70歳だ。すでにリタイア済みとは言え、今も現役当時と変わらず、ワードロープは手入れの行き届いたスーツとネクタイがビッシリ。働く意欲もまったく衰えていない。

 

一方、女性の名は、ジュールス(アン・ハサウェイ)。立ち上げたファッション通販サイトが大成功をおさめ、今や数百人の社員を束ねる若きCEOだ。分刻みのスケジュールに追われながら、一児の母でもあるジュールス。家では、夫のマット(アンダーズ・ホーム)が仕事を辞めて専業主夫となり、家事と育児を担っている。

年齢差は40歳。何の接点もなかったはずのふたりは、ベンがジュールスの会社のシニアインターン枠に応募。選考に合格し、ジュールス直属の部下となったことから少しずつ近づいていく。最初はベンをただの老人扱いし、興味も関心もなかったジュールス。けれど、ベンの機知と機転、豊かな人生経験に裏打ちされた包容力に支えられ、いつしかジュールスにとってベンは誰より心休まる存在に。

ふたりの関係は恋愛とはまったく別物。だけど、見ているとなんだか微笑ましくて、自分の中のカサカサになっていた部分に澄んだ水が染みこんでいくような心地よさがある。残業中、ジュールスが一緒になってベンのFacebookを登録するシーンは、さりげないけどなんだかいとおしさがこみ上げてくるし、母親に対する愚痴メールを間違って本人に送ってしまったジュールスのために、ベンが仲間たちを引き連れ母親の自宅に忍び込むシーンは、思わずケラケラ笑ってしまうおかしさ。

ふたりの間に流れる感情は決して男女のLOVEではないけれど、ハリウッドらしいロマンティックコメディのエッセンスがしっかりつめこまれていて、最初から最後まで気持ち良く世界に浸っていられるのが、『マイ・インターン』の魅力。作品全体に流れる優しい空気感が、きっとあなたの疲れた心を柔らかく包んでくれるはず。

『マイ・インターン』はNetflixで配信中。
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