今日は何を着て行こうか、夜は何を食べようか、次のお休みは何をしようか……私たちは日々の生活の中で常に何かを選んでいます。就職、結婚、出産……人生の大きな岐路においても選択を繰り返してきました。あの時こっちを選んでいたらどんな人生になっただろう。そう考えない人はいないのではないでしょうか。数々の伝説を残したトップスターであり、宝塚歌劇団100周年の顔としても活躍され、退団後は女優の道を選び、様々な役を演じている柚希礼音さん。現在、「人生の選択」をテーマに描いたミュージカル『イフ/ゼン』に取り組んでいます。柚希さんは、ご自身の人生の選択をどのように考え、変化してきたのでしょうか。

 

柚希礼音
1979年6月11日生まれ。大阪府出身。99年、初舞台。09年、宝塚歌劇団星組トップスターとなる。主な主演舞台に「ロミオとジュリエット」、「オーシャンズ11」、「眠らない男・ナポレオン ー愛と栄光の涯(はて)にー」 などがある。14年には日本武道館での単独コンサートも実現するなど、宝塚歌劇100周年を支えるトップスターとして活躍。15年5月10日、「黒豹の如く」、「Dear DIAMOND!!」にて宝塚歌劇団を退団。宝塚退団後の主な出演作品は、ミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」、A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」、ミュージカル「ボディガード」など。受賞歴「第30回松尾芸能賞」新人賞、「第65回文化庁芸術祭賞」演劇部門新人賞、「第37回菊田一夫演劇賞」演劇賞。21年1〜2月ミュージカル「イフ/ゼン」に出演予定。

 


楽に心の思うままに過ごすことは本当に大切


これまでの人生の選択について伺うと、宝塚に入るときに人生が大きく変わり、そして、退団後は選択の日々だと言います。

「宝塚に入る前はバレリーナになりたくて、海外留学をしようと思っていました。ただ、バレリーナ体型ではなかったこともあり、親が提案してくれたのが宝塚。小学校5、6年生くらいから、バレエの先生や友達の親にも会うたびに、『宝塚を受けたら?』と言われていました。いざ受験してみたら、バレエで「いけない」とされていたことの多くが「いい」とされて、向いているものに出会えて感激しました。宝塚在団中は、決定したことを「次はこの作品」と進んでいきましたが、退団すると、毎作品ごとにやるかやらないかを決めるのは自分次第なので、選択の機会が増えました。いつもその作品をやってみたいかどうかを大切にして決めています」

人生の大きな決断ではなく、日々のちょっとした選択はどんなふうに選んでいるのか、その秘訣を伺ってみると、私たちにも刺さる言葉が返ってきました。「わかる!」そんな言葉が、あちらこちらから聞こえてきそうです。

「今、何を思うか、何をしたいかを大切にするようになってきました。以前は、なぜあんな風に生きていたんだろうって思うくらい、スケジュール帳も埋まっていましたが、『やりたいこと』ではないんですよね。『やらなくてはいけないこと』なんです。でも、苦しくなって一度やめてみようと。素直な思いを周りの人に伝えて、楽に心の思うままに過ごすことは、本当に大切なんだと思うようになりました」

柚希さんは、なぜ「To do」から「Want to」に変化したのでしょうか?

「自粛期間に、家から出ずに過ごすことによって、何もせずにダラダラすることも大切なんだなと気づきました。ダンスをしたり、歌を歌ったり、やるべきことを必死にやっていましたが、週に1回は家から出ずにダラダラして、DVDを観たり、海外ドラマにハマってみたり。ようやくスローになったんだと思います。皆さんが薦めてくださった『愛の不時着』や、いまさら『ゴシップガール』を見ています(笑)。アメリカンな身振り手振りなど、ミュージカル『イフ/ゼン』に必要かなと思って」
 

いいことも悪いことも自分が選んだことが運命

シャツ¥39000、ニット¥45000、パンツ¥43000/すべてリビアナ コンティ(グルッポタナカ) イヤリング¥38000、ブレスレット¥25000/ともにデルフィーヌ・シャルロット・パルモンティエ(アッシュ・ペー・フランス(本社)) 靴/スタイリスト私物

ミュージカル『イフ/ゼン』は、「もし、あの時、こっちの道を選んでいたら」というふたつの道を、同時進行で描いていくミュージカルです。仕事に生きるか、運命の人との出会いを選ぶか、その主人公エリザベスを演じていて、柚希さんはどんなことを感じているのでしょうか。

「私だったらどうするかなと考えますね。エリザベスは、いつも失敗する方を選んできたという考え方でしたが、最終的にはいいことも悪いことも自分が選んだことが運命だ、それが人生だと考えて生きていく人になっていきます。本当にそうだなと思いますね。やはり、誰しも選択を間違えたかもしれないと思う瞬間がありますよね。でも、それを選ばなかったから今があるんだと、山あり谷ありの経験を経て、少しは思えるようになってきました。周囲の友達の支えもありがたかったです」

山あり谷あり、友達の支え、誰の人生にも思い当たることはあるんじゃないでしょうか。ミドルエイジになると、これまでの人生を振り返り、あの時の思い、選択は……と考えてしまうことは多いと思いますが、エリザベスの選択を観ながら思うところは多そうです。41歳になる柚希さんも、共感を寄せます。

「自分の人生の主な登場人物は決まっているというじゃないですか。その人と、そのときに結ばれなくても、やっぱり何年後かに出会ったりするものだと。この作品のどちらの道にも、同じ人物が登場して、それぞれの関わり方をしていくんです。歌も、芝居も、ボリュームがあって大変ですが、きっと役の思いを自分に置き換えて、共感してくださる作品なので、そこまでいけるように頑張ります。観たあとに絶対に語り合いたくなると思います」
 

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