知らないと恥ずかしい。起業の基本を学べる

Netflixオリジナルシリーズ『スタートアップ: 夢の扉』独占配信中

――社員の持ち株比率の正解は?バーンレートとは?イグジットって?アクハイアとは?スケールアップのタイミングは?

『スタートアップ』を今見るべき理由の一つは、知っているようで説明できない起業の基本を学べること。

「サンドボックス」と呼ばれる、ベンチャーキャピタル運営のスタートアップ支援施設が物語の舞台となっているのも目新しい設定です。一体、どんな仕組みなんだろう?と興味をそそられませんか?

後ろ盾も資金力もない者の起業を支援するサンドボックス。ここへの入所が叶えば資金援助や教育を受けられるのですが、当然ながらかなり狭き門です。

入所者を選抜するシーンでは、チームメンバーの集め方、どういう資質のある者がCEOになるべきか、投資家を魅了する事業モデルとは……といった学びもあって注目です。

 


嘘や見栄は悪いこと?その答えの描かれ方が秀逸 

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――誤解を現実にするために――

これは物語の序盤、スタートアップ支援施設「サンドボックス」を目指すナム・ドサンが書いた入所の動機です。

彼が起業で成功したいと強く願った最初のモチベーションは、世のためでもお金のためでもなく、ある女性に対する虚栄心でした。

ナム・ドサンは幼い頃に数学オリンピックで優勝した過去を持つ工学部出身の天才エンジニア。学生時代の仲間とともに起業しているものの、収益性ある事業を作れず投資家に見放されています。

しかし突如ドサンの前に現れた、ベンチャーキャピタル所属の投資家ハン・ジピョンから「成功したスマートな起業家のフリをしてパーティーに参加し、過去に文通していた女性と会ってきて欲しい」と頼み込まれ、資金援助の提案につられて引き受けます。

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着慣れないスーツを着て、美容室に行き、普段の自分とは別人となって、自分を「文通していた初恋の相手」だと信じ込む女性――ソ・ダルミに会いに行くのですが、もちろん実際のところドサンはダルミと文通していません。

幼い頃に両親が離婚し父側についたソ・ダルミは、実母・実姉と離れて暮らしていました。友達もおらず孤独なダルミを可哀想に思った祖母がジピョンに「ダルミに手紙を書いてあげて欲しい」と頼んだのです。

当時、天涯孤独の身の上でダルミの祖母が経営するアメリカンドッグ店で寝泊りさせてもらっていたジピョンは頼みを断りきれず、たまたまそばにあった数学オリンピックの新聞記事からナム・ドサンの名前を拝借して手紙を書きました。

つまりダルミがドサンだと信じ込んでいるのは、実はジピョンなのです。

最初は一夜だけ、成功した起業家を演じて終わるつもりだったドサンですが、パーティーで知り合ったダルミに恋をしてしまったことから後に引けなくなっていきます。

正直に話してダルミを失望させたくはない。しかしダルミには会い続けたい。そのためには成功を手にして誤解を現実にするしかない――。

ダルミの前で張った見栄を嘘にしないために、ドサンは本気でサンドボックスへの入所を決意。結果として、この虚栄心こそが彼を成長させ成功に導いていったのです。