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「女優やモデル」のメイクをしているからわかる、“美人”なことの先にあるもの【メイク水野未和子さん】

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“ディファインメイク”の過去の作品から見えてくる、水野さんの美学

井川遥さん。『&ROSY』(宝島社)2019年5月号アザーカットより(撮影/Yusuke Miyazaki)
熊沢千絵さん。『Grazia』(講談社)より(撮影/笹口悦民)
黒田エイミさん。『&ROSY』(宝島社)2018年12月号より(撮影/Jun Okada)

水野さんの著書に企画から携わった私も、じつはずっと前から、井川さんと同じことを感じていました。
私が水野さんと出会ったのは、もう、15年以上も前のこと。大人の女性誌、Grazia(現在は休刊)の編集部に在籍していた私が、カバー撮影でモデル・熊沢千絵さんのメイクをお願いしたのがきっかけ。のちに、水野さんがロンドンから日本に戻り、活動を始めてまもないころだったと知りました。

見ての通り、熊沢さんは典型的な美人顔。水野さんのメイクで、表面の美しさのみならず、輝く目の奥に包容力が透け、凛とした口元に強い意志が見え、はっとさせられたのを思い出します。

「千絵ちゃんの場合は、『足し算』でなく『引き算』のメイクを心がけました。まるで彫刻のように余計なものをそぎ落としていくだけで、『上質』や『豊かさ』が自ずと際立ってくる。ある意味、私が目指す究極」(水野さん)

正直で謙虚で、誰より正義感と包容力に溢れた人。そんな熊沢さんの「本質」が水野さんのメイクではっきりと浮かび上がったのです。

モデル・黒田エイミさんも、非の打ちどころのない美しさが印象的。水野さんがメイクをしたこの一枚は、きりりとした表情の中に、息吹や体温を感じます。

「エイミちゃんは、物静かだけれど、個性や魅力が強くある人。どこか『男らしさ』(!)を感じるほど、存在感が凛として美しいんです。これは、ビューティのテーマながら、ポートレイトのように撮りたいとお願いしてできあがった写真。見る人に訴えかけるエイミちゃんの『何か』が引き出せたと自負しています」(水野さん)
 

さらに、最新の『&ROSY』2月号に掲載されているモデル・蛯原友里さんと水野さんのコラボレーション企画では、今までとはまた違う蛯原さんの魅力が弾けていました。水野さんのメイクで蛯原さんは、「自分の顔、好きって思えた」。
一方、水野さん曰く「年齢を重ねるほどに、私たちはどうしても『着込みがち』だけれど、えびちゃん(蛯原さん)は『脱ぎ捨てている』ように見える。芯が強くて全然ぶれていない、えびちゃんの格好よさが、より際立ってきた気がします」。

蛯原友里さん。発売中の『&ROSY』(宝島社)2021年2月号より(撮影/八木淳) この号の表紙の井川遥さんのメイクも、水野さんが担当しています。


誤解を恐れず言うなら、水野さんのメイクは、ずっと変わっていません。表現したい女性像、人間像ありき。メイクは、その人の奥の奥にある「何か」を掘り起こし、際立たせるためにある。だから、持って生まれた美しさの先に、意志が、感情が、生き方までも見えてくる……。それこそが、水野さんならではの美学。だから、まわりにいる私たちも引き込まれるのです。

 


メイクアップ・アーティストとしての水野さんに私が感じた「特別」なもの

 

私はラッキーにも、何度か水野さんにメイクをしてもらうチャンスに恵まれていて、そのたび、自分の顔が好きになります。年齢を重ねるほどに、悩みは増えていくばかりだけれど、それも含めて「私」として愛せるようになった気がするんです。
エディター、ライターという職業柄、しかも、大人の女性を対象にしたメディアに関わることが多い私は、ずっとメイクを「カバーするもの」「カモフラージュするもの」という視点で提案してきた気がします。そのたび、違和感を抱きながら。
好きな洋服があるように、好きなメイクがあっていい。ファッションで自分を語るように、メイクで自分を語っていい。年齢やライフスタイル、いや性別までも超えて。
水野さんに出会えて、水野さんのメイクに出合えて、私にとってのメイクの意味合いは、まるで変わりました。

 

私は、水野さんの撮影現場に何度も居合わせたことがあります。水野さんが創る「メイク顔」は、ずば抜けて美しい。でも、私がそれよりもどきりとさせられるのは、メイクを落とした「素顔」。意志が透けて見える、生き方が透けて見える、ああ、だからあのメイクだったんだと気づかされる……。私も、意志が透けて見える人、生き方が透けて見える人でありたいとそのたび思うのです。これこそが、「ディファインメイク」にできる、本当のこと。ちなみに、水野さんの著書には、井川さんの素顔も掲載されています。私がそうであったようにきっと、堂々と「私」を好きと言える自分でありたいと思うはずです。

水野未和子(みずのみわこ)

メイクアップアーティスト。オレゴンに留学後、イギリスに渡り、London College of Fashionでメイクアップを学ぶ。卒業後、フリーランスのメイクアップアーティストとしてロンドンでキャリアをスタートし、帰国後は多くの雑誌や、KOSE、POLAなどの広告、CMなどを手がける。人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)するメイクに定評があり、数々の女優やモデルが厚い信頼を寄せる。【Instagram】@mizuno.miwako

松本千登世(まつもと ちとせ)

美容エディター。1964年鳥取県生まれ。神戸女学院大学卒業後、航空会社の客室乗務員、広告代理店勤務を経て、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に勤務し、編集作業に携わる。その後、講談社で専属エディター&ライターとしての活動を経て、フリーランスに。女性誌や単行本など美容や人物インタビューを中心に活躍中。幅広い知識と穏やかな人柄が人気。著書に『もう一度大人磨き 綺麗を開く毎日のレッスン76』 『「「ファンデーション」より「口紅」を先に塗ると誰でも美人になれる「いい加減」美容のすすめ』(講談社)、『美人に見える「空気」のつくり方 セルフケアで女を磨く79のテクニック』(三笠書房)などがある。

 

<書籍紹介>
『ディファインメイクで自分の顔を好きになる
“私だけの魅力”が絶対見つかる自己肯定メソッド

著 水野未和子
定価 1540円(税込)
10月30日発売
Kindle版も配信中!
講談社
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数々のファッション誌や広告で女優やモデルのメイクを手がけているメイクアップアーティスト、水野未和子さん。水野さんのメイクの特徴は、人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)すること。何かを隠すのではなく、誰かのようになるのではなく、「自分になる」メイクです。この本では、あらゆる年代、あらゆる属性の誰もが自分の魅力を底上げできる「ディファインメイク」の考え方と、そのメソッドを詳しく紹介します。


メイク/水野未和子(3rd)
撮影/目黒智子
ヘア/Kazuki Fujiwara(Perle Management)
取材・文/松本千登世
構成/松崎育子(編集部)

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