1時間ぐらいの散歩を侮るべからず

 

そして腸能力の三つ目が「ウンチを出す力」です。

お腹の深いところにある筋肉、つまりインナーマッスルを鍛えることで、腸をよく動かしてウンチをじわじわと押し出す筋力をつけることです。

 

インナーマッスルを鍛えるためには、スポーツジムへ通いトレーナーの指導を受けて効率的に運動しなければ……と考える人もいるでしょう。たしかにスポーツジムのトレーニングマシンを使ったインナーマッスル強化は効率的で、一定レベルまで鍛えれば、その状態を維持することも効率的にできるでしょう。パーソナル・トレーナーをタイムサービスで雇って運動をした人が便秘を解消したという話も聞いたことがあります。

ですが、そのような専門家の指導を受ける方法がすべてではありません。私はタダでできる1日9000歩以上の散歩をお勧めしています。電車やバスで通勤通学している人は、それだけでおおよそ3000歩ぐらいは歩いているはずですので、加えて1時間ぐらいの散歩をすれば合計で9000歩ほどになるでしょう。その散歩も心拍数を上げて歩こうとか、軽く汗をかくぐらいという歩行でもいいですが、風景を楽しみながらゆっくり歩くだけでもいいと思います。万歩計を持っている方ならそれを利用するといいでしょうし、今どきのスマートフォンには、たいていヘルスケアデータを計測するアプリケーションがあらかじめ入っています。散歩の歩数を計測すると、計測する行為そのものが小さな楽しみになって、散歩運動がよりはかどると思います。

以上が、免疫を正しく働かせるという観点から、腸内細菌のバランスを整えるため「腸能力」を高める三つの方法となります。私の経験からアドバイスするなら、この三つの方法の重要性は、「ウンチを出す力」が5割、「ウンチを作る力」が4割、「ウンチを育てる力」が1割ぐらいの割合だと思います。

著者プロフィール
辨野義己(べんの よしみ)さん:
細菌学者。1948年、大阪生まれ。理化学研究所科技ハブ産連本部辨野特別研究室・特別招聘研究員。酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業。東京農工大学大学院獣医学専攻を経て理化学研究所へ。1982年東京大学農学博士授与。およそ半世紀にわたって腸内細菌の生態と分類を研究し続けている。著書に『大便通』(幻冬舎)『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)など多数。

 

『「腸内細菌」が健康寿命を決める』
著者:辨野義己 集英社 880円

約2万人分のウンチを分析して得られた腸と腸内細菌に関する最新の研究結果を、ユーモラスな語り口でわかりやすく解説。免疫力のほかにも「便秘」の原因と解消法、「長寿」と腸内細菌の関係といった興味深いテーマが満載です。中でも、経験豊富な筆者の爆笑研究秘話は必見!


構成/さくま健太

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