年齢では測れない「フレイル」の評価

 

この「フレイル」の評価は、様々な場面で「年齢」の数字以上に、その後に起こる身体機能の悪化や死亡率をより正確に予測させることが知られています(参考文献2)。すなわち、同じ70歳といっても身体機能や死亡率には大きなばらつきがある一方、同じレベルのフレイルの人を比べれば死亡率が似てくるということです。

例えば、医療現場でもかつて「あなたはもう80歳なので手術は難しいです。」などと年齢で治療法を決めてしまうような説明が半ば常識的に行われてきました。(いまだにそのような医師もいるかもしれません。)しかし、これは先の「老化は千差万別」という説明と矛盾します。同じ80歳でも、まるで30代や40代のように足腰がしっかりしていて動き回っている人もいれば、寝たきりの人もいるのです。この両者で、年齢が同じというだけで治療法の選択も同じになるというのはやはり腑に落ちません。

これが見直され、現在では年齢だけで判断せず、フレイルの評価もしっかり行なった上で治療法を決めていきましょうという考え方が広がりつつあります。

このように、老化を考える場合に、年齢以上にこのフレイルという尺度が重要になります。

 


プレフレイルの人は65歳以上の3〜4割も


また、フレイルがあると、病気にかかりやすく、治療の合併症のリスクも高いことが知られています(参考文献3)。しかし残念なことに、65歳以上のうち、約1割の人がフレイルにあり(参考文献4)、また3-4割がその予備軍であるプレフレイルという状態にあることが知られています(参考文献5)。実は、これだけ多くの人がフレイルを抱え、リスクに晒されているのです。

ただ悪いことばかりではありません。このフレイルは予防ができると考えられています。そこで重要になるのが「5つのM」の視点ですが、これについてはこれからじっくり見ていきましょう。

未然に予防ができる可能性が高いからこそ、フレイルを早期に認識し、早くから予防を開始することが大切だと考えられています。
 

参考文献
1    Rockwood K, Song X, MacKnight C, et al. A global clinical measure of fitness and frailty in elderly people. CMAJ 2005. DOI:10.1503/cmaj.050051.
2    Oresanya LB, Lyons WL, Finlayson E. Preoperative assessment of the older patient: A narrative review. JAMA - J. Am. Med. Assoc. 2014. DOI:10.1001/jama.2014.4573.
3    Clegg A, Young J, Iliffe S, Rikkert MO, Rockwood K. Frailty in elderly people. In: The Lancet. 2013. DOI:10.1016/S0140-6736(12)62167-9.
4    Collard RM, Boter H, Schoevers RA, Oude Voshaar RC. Prevalence of frailty in community-dwelling older persons: A systematic review. J. Am. Geriatr. Soc. 2012. DOI:10.1111/j.1532-5415.2012.04054.x.
5    Cawthon PM, Marshall LM, Michael Y, et al. Frailty in older men: Prevalence, progression, and relationship with mortality. J Am Geriatr Soc 2007. DOI:10.1111/j.1532-5415.2007.01259.x.

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