自らもDVサバイバーでシングルマザーのソーシャルライター・松本愛さんが、DV当事者の「声」を丹念に拾い上げ、日本のジェンダー意識の遅れの実態をレポートします。公私ともにパートナーだった男性と授かり婚したBさん。しかし結婚後、夫の自己破産歴と、極度のマザコンであることが発覚し、離婚話が持ち上がります。係争は延々続き、住む場所も仕事もお金も、精神的な安定さえも失ったBさん。やっとの思いで離婚が成立したものの、元夫からのリーガルハラスメントはまだまだ終わりそうにありません。

※個人の特定を避けるためエピソードには脚色を加えている場合もあります

 


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誰からも攻撃されずに子育てがしたかった


高裁まで争った結果、3カ月に1回、数時間の面会を命じられたBさん親子。支援機関の利用は認められ、どの機関を使うかはBさんが選択権を有することになりました。しかし支援機関利用の費用は折半。Bさんの場合、養育費さえ払われていないのに。

納得がいかず、無駄と知りつつ最高裁に特別抗告したBさんでしたがもちろん棄却。最高裁への特別抗告する間、面会交流を待ってもらえるわけではなく、高裁の決定が出てすぐ3カ月以内に支援機関を決めなくてはならなかったBさんは一番有名なFPIC(Family Problems Information Center=家庭問題情報センター)に依頼することにしましたが、問題は利用料。3年半でかかった弁護士費用の総額はもはや150万円を超えており、そのうえ、面会の度にかかる1万円を超える出費。

しかしBさんの元夫は結局、FPICへ連絡しませんでした。自分で支援機関を選べなかったことが気に入らなかったからでしょうか。FPICの場合は親以外、つまり義母の立ち合いについては双方の合意が必要だったからでしょうか。それともただの嫌がらせでしょうか。理由はわかりませんが、面会交流を求めて高裁まで争ったはずの元夫は、Bさんが書類を揃え、申し込みをした手間を踏み躙って、結局、面会交流を実施することはありませんでした。

もちろん、期待を裏切らない元夫。FPIC側から「時間切れ」とBさんの申し込みが取り下げられた後に、再度FPICを利用して面会したいと申し入れをしてきましたが、Bさんの方が「元夫側の事前相談が終わったらこちらも手続きをします」と返答した後、それっきり。自らやるといってやらない、いつものパターン。

そして今、Bさんはまた元夫から新しく調停を起こされています。

既に別居してから5年半超。途切れることのない係争に晒されるストレス、積み上がっていく弁護士費用。調停期日の前後は抑うつ状態になり、年々持病も増えていく。親としての自信も持てぬまま、元夫からまた責められるのではないかと怯えながらの子育て。

絞り出すように「誰からも攻撃されずに子育てがしたかった」というBさん。生き甲斐だった仕事も失い、念願だった子どもへの思いを汚され、いまだ続く元夫からの嫌がらせに悩まされても、そこから救ってくれる正義はどこにもありません。

 

このBさんのエピソードについては度々「脚色が過ぎるだろう」というような意見も寄せられました。そう感じるのも当然かもしれません。

しかし、Bさんからは逆に「“個人の特定を避けるためエピソードには脚色を加えている場合もあります”という注意書きを外してほしい。嘘だと思われたくない」という打診があったことを書き記しておきます。「元夫と義母から言われたことされたことが創作だったらどれほどよかったか」と。「きっとこのまま子供が成人するまでこの状況は続くんでしょう。人生の中で充実するはずだった30〜40代がこの争いに費やされることが本当に虚しい」と言った彼女の絶望的な表情は忘れることができません。

 
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