ごっくんしたら同じ味。自由な発想のレミさんのレシピ


アイディア満載の料理の数々、その中でも心強いのは「手間抜き」の料理です。たとえば、幼き日の長男・唱さんが「ごっくんしたら同じ味」という言葉から命名された「ごっくんコロッケ」は、「丸めて、包んで、揚げる」という工程を省いたコロッケ。具材に皮を乗せた「台満(タイマン)餃子」も、皮に包む工程が省かれています。

レミさん:今の時代はそういうほうが逆に新鮮な感じがするみたいですね。私は無精で気が短いから、パパッとできないとイヤなの。でもそういう手間を省くだけで、味は完璧。

それを支えているのは、本の後半に登場する数々の「出汁」。鰹節、昆布、煮干し、干し椎茸、ササミ、鶏ガラ、にんにくなど、様々な出汁のとり方が書かれています。

『家族の味』より。絵/和田誠

レミさん:料理は出汁がベースだから、そこが美味しければ、あとは素材の旨味でどうにかなるんです。昨日も鰹節を買ってきて、出汁をとったけど、鰹節はやっぱり美味しいね。塩も醤油も入れなくてもそれだけで風味があって。私は鰹出汁が一番好きなのは、小さい頃の体験が入ってるのかな。うちではお母さんが鰹節をかっ、かっ、かっ、って削る音が目覚まし時計代わりだったの。その音を聞きながら「これから美味しい出汁のお味噌汁ができるんだな~」って。そういうのを感じることって、すごくいいんですよね。

 

もちろん今ならパックの鰹節で十分。鰹出汁は案外簡単で、お鍋に沸いたお湯の中に鰹節を放ち、火を止めて漉すだけで完成します。忙しい平日だと難しいかもしれませんが、例えば休日だけなら。鰹出汁の香りが漂うキッチンは、いつもとはちょっと違う心の余裕と、間違いなく美味しいお料理を約束してくれます。

『家族の味』より。絵/和田誠

レミさん:息子たちには料理は一切教えてないんだけど、宿題をキッチンでやらせてたから、私が料理をする姿ーー野菜を水で洗う音、炒める音、トントン切る音、全部見たり聞いたりしてたんじゃないかなあ。次男の率は、子供が小学校に上がった時にお弁当を作りはじめて今年で5年目。今は1年生、3年生、5年生の3人分を毎日作ってます。それが高じて『お弁父』の本まで出したり。長男の唱も妻の(上野)樹里ちゃんに聞いたら「すごい上手いですよ」って。小さい頃から、ワインを鼻先に持っていくと「ぶどうのくるちいにおい」なんて言って、味や香りに敏感だったの。それもいろんなものを食べてたからじゃないかしら。