マンションの3階から壁伝いに逃走


そんなときに出会った弁護士さんが「お子さんが無事に帰って来られるようにがんばりましょう」と言ってくれました。

子どもが無事に!

それまでろくにしゃべれないような精神状態でしたが、その言葉で目の前がパーッと開けたような気持ちになったCさん。おかげでやっと「引き渡し調停」を申し立てることができました。余計な刺激はしたくなかったので保全処分の申立てはなし。

これまでの行動パターンから、彼の子どもへの執着は、子への愛着ではなく“Cさんへの嫌がらせ”。子どもを取り上げることが支配と加害の方法のひとつである、ということで弁護士さんや女性センターの職員とも意見が一致しており、エスカレートしたら子どもが危険であることから、まずは彼を納得させる必要があるという判断になったためです。

しかし調停は不成立。

それどころか「母親はヒステリーを起こして子どもを布団に投げた、生活保護を受け社会的位に自立もしておらず精神疾患もあるので虐待の恐れがある」と主張してきたのです。

調停は審判へ移行することになりました。しかしその結果出たのはCさんへの娘の引き渡しの決定。当然です、彼と入籍もしておらず、彼には親権もなく、それどころか母娘は養育費も貰わず二人で生活していたのですから。

 

審判の内容は極めて真っ当「相手方は非親権者であり監護者でもなく、未成年者を監護する権限を有せず、引き渡しを拒絶し得る法律上の根拠がない。また申立人に未成年者を養育看護させることが子どもの福祉に反する事情も認められず、経済的に困難な旨の主張は適切な養育費を払えば解決できる」というものでした。

 

しかし命じられたのは引き渡しの直接強制。これは当時、当事者間での子の引き渡しが条件だったため、極めて成功率の低い方法でした(現在は保育園や幼稚園などでの強制執行も可能になっています)。相手はそれがわかっていたのでマンションの3階から壁伝いに逃走。初回の執行は失敗に終わったのでした。

そして引き渡しは間接強制へ——。

(次回につづく)

前回記事「「いつまで女のつもりなんだ、気持ち悪い」否定され自信喪失し、子を連れ去られた話」はこちら>>

 
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