スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

仕事が私に自信をくれるはず。だから、就職浪人してでも編集者になりたかった【自分軸で生きる練習】_img0
 

アメリカで、ほんのちょっぴりモヤモヤが晴れたとはいえ、大学進学のころになっても、やっぱり自分には自信が持てませんでした。でも一方で漠然と、「私に光をくれるのはきっと仕事だ」。そんな確信もあったのです。
「仕事なら努力でつかみ取れる、それは間違いなく自信をくれるはず! 努力をしてつかみ取れるものなら、何としてでもつかまなきゃ!」――追い詰められたように、考えていたと思います。

 

もともと本や雑誌が好きだったこともありますが、小学校や中学校で、作文を褒められたり、賞をもらうような成功体験があったこと、大好きだった祖父が自費出版で本を出版する経緯を、子供ながらに見ていたこともあり、編集者という仕事に強く惹かれたのだと思います。
自分が得意なのは、書くことや伝えること。好きなことは、ファッションやおしゃれ――そのふたつを組み合わせた仕事が、ファッション雑誌の編集者! そんな思考回路で、ファッション誌編集者への夢が育っていきました。
じゃあ、そのために大学で必要なことは何? ――そんなふうに考えて、女子の出版社への就職率が高かった、立教大学へ進学することに。
さらに、雑誌づくりはチームプレイです。
高校までは、ジャズダンスや剣道といった、個人スポーツしかやってこなかったため、チームプレイを学ぼうと、大学ではラクロス部に入部しました。
思い立ったらまっしぐらな性格はこんなころから。そして、いまでもそれは変わりません。

大学生活は、勉強はそこそこでしたが(笑)、部活に打ち込み、3年生のときには副キャプテンになったりもしました。もちろん、恋愛も合コンもたくさんして、キャンパスライフを謳歌していました。
けれど、どこか霧が晴れない感じはずっと胸のなかでくすぶっていたんですね。未だ拭えない「何ものでもない自分」への焦りのようなものが……。
4年生になり、いざ就職活動をするときも、出版社はたくさんありましたが、私の希望は、女性ファッション誌一択。
総合出版社を受けることも考えましたが、漫画の編集部に配属されるかもしれません。いろいろと考えた末、私の選択肢は、婦人画報社(現在はハースト婦人画報社)だけでした。そこは、大好きだった「Vingtaine(ヴァンテーヌ)」編集部がある会社、なんとしても「ヴァンテーヌ」編集部に入りたい! ――そんな思いでいっぱいでした。
忘れられないのが、1次試験の日です。
夏の暑い時期でしたが、運悪く、高熱を出してしまいました。フラフラになりながら、会社まで行ったのに、「試験は明日ですよ」と言われる始末……。あまりに辛く、一瞬受験を諦めかけましたが、翌日、まだ熱が下がらないまま、試験を受けに行ったのは、よく覚えています。
「君はどこの編集部に行きたいの?」  
「ヴァンテーヌ編集部です」
「だろうね」
――こんなふうに面接官に言われるほど「ヴァンテーヌ」らしい、装いで。
試験はひとつずつ、順調に進んで行きましたが、なんと、最終面接まで行ったのに結果は不合格。もう、人生の終わりのような喪失感でした。
当時、婦人画報社の試験は、他の会社に比べると時期的に遅かったため、他に受ける会社もありません。本当に先がなく、真っ暗でした。
どうしても「ヴァンテーヌ」の編集者になりたかったし、就職試験のための私塾に毎週末通ったり、そのために大学も選んだのです。最終面接まで進んだということもあり、次はきっとリベンジできる、と父に「就職浪人をさせてほしい」とお願いをしました。「どうしてもヴァンテーヌ編集部で働きたいから、お願いします」と。
そこまで言うなら、と、父が折れ、苦手で唯一まだ試験がクリアできていなかった会計学の単位を落とすことで、就職浪人をすることに。大学4年生の12月でした。
そんなとき、婦人画報社から1通の封書が届きました。「会社に遊びにきませんか?」と。よくわからないけれど行ってみようと思い、いざ行くと「新創刊が続いて人手が足りないので、つきましてはうちに来ませんか?」って! 
「こんなことってあるの!? 噓でしょう?」と、まさに青天の霹靂でしたが、すぐにグリーンの公衆電話から、母に電話したのを覚えています。  
が、就職浪人しようと決めたばかり。まだ、単位を取り切れていないのです。しかも残したのは苦手だった会計学。担当教授に経緯を説明しに行ってみたものの、「普通に試験に合格しなさい」とのお答え……。そこからは、毎日教授室に通い、必死で勉強しました。結果はA判定! 大学の卒業式は、もうこの世の春! みたいなワクワク感に満ちていました。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
大草直子の「自分軸で生きる方法」

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第1回「変わることはわがままじゃない」>>
第2回「「逃げたっていい」今いる場所がすべてじゃない【自分軸で生きる練習】」>>
第3回「「モヤモヤ」「閉塞感」から逃れたいという感覚は、人生を変えるチャンス【自分軸で生きる練習】」>>