沢口さんとはよく“お土産ごっこ”をしています(笑)

――榊マリコを演じる沢口靖子さんは、若村さんから見てどんな方なんでしょうか。

沢口さんとマリコの共通点は、仕事に対して全身全霊で向き合う姿。『科捜研』の現場は居心地が良くて、自然とみんなが頑張ろうという気持ちになれるんですね。それは、沢口さんの作品への向き合い方から影響を受けているところがすごくあって。風丘早月がマリコを尊敬するように、私も沢口さんのことを尊敬しています。

――ぜひ沢口さんとの現場でのエピソードを聞かせてください。

個人的によく“お土産ごっこ”をしています(笑)。新しいシーズンが始まったときは、今シーズンもお願いしますという気持ちを込めて、その季節に合ったものをお渡しするのですが、沢口さんもお返しをくださるんです。

――この劇場版では沢口さんからは何をもらったんですか。

焼き菓子をいただきました。その場で食べて感想をお伝えしたら沢口さんが「そうでしょ? おいしかったわよね」とテンションが上がって。そんな沢口さんを見ていると、可愛らしい方だと後輩ながら温かい気持ちになります。

――ドラマでも、風丘早月が科捜研に差し入れをするのがおなじみになっていますが、撮影現場でも同じようなことが行われているんですね(笑)。

そうですね。ドラマと違うのは、沢口さんもくださることです(笑)。お忙しいのに毎回、沢口さんがご自身で選んでくださっているそうで。その気持ちに胸がいっぱいになりながら、お腹もいっぱいになっています(笑)。

――風丘早月を演じる上で、どんなことを大切にしていますか。

風丘早月には、夫との悲劇的な別れという背景があります。それにもかかわらず、子どもたちをしっかり育て、仕事も意欲的に、明るく生きている。その明るさは大切にしています。生きていく上で、苦しいことや大変な目に遭うことって山ほどあると思うんですね。そんな中で、悲しみを抱えながらも明るく日々を過ごす風丘早月の姿が、観ている方たちへのひとつのエールになればいいなという気持ちはあります。

――若村さん自身も、風丘早月の生き方に励まされるところがありますか。

よく頑張っているなと思いますよ。かなり働いているので、睡眠時間はどれくらいなんだろう?と考えたり(笑)。悲しみは内に秘め、よく働き、おいしいものを食べ、前を向いて生きる。それって人生を生きる上ですごく大切なことだと思いますし、とても好感の持てる女性ですよね。

 


できなくなることに抗うのではなく、受け止める


――若村さんが『科捜研の女』のレギュラーメンバーに加わったのは、2008年から。ちょうど40代を迎える頃です。40代は身体にもいろんな変化が訪れ、今までと同じモチベーションでは仕事も生活も頑張れないことが増えてきます。若村さんは40代のとき、どんなことに悩んでいましたか。

みなさんもそうだと思いますが、体力面での変化は日々実感していましたね。簡単に言うと、疲れが癒えない(笑)。今までできていたことができなくなる。そのことに最初は気づかなくて、なんでできないんだろうと自己嫌悪に陥ったり。自分の体力が少しずつ衰えていることを信じたくないという戸惑いを感じはじめたのが、40代でした。

 

――その戸惑いにどう対処しましたか。

物の見方を変えました。今までできたことができなくなるのは、自分に対してすごくストレスがかかる。でも、なんでできないんだと自分を責めるのではなく、そういうお年頃になってきたのねと受け止める。そうすると、若い頃にはできなかった考え方ができるようになるんですよ。

――たとえばどういうことですか。

やっぱり寝なきゃダメなんだとか(笑)。私、わりとずっと眠らない人だったんですね。それこそ沢口さんは一番の元気の源は睡眠だと日頃からよくおっしゃっていて、そのことを今さらながらそうですねと頷く今日この頃なんですけど。若い頃の私はそれが全然わかっていませんでした。

40代はまだ30代の余韻で走れるんです。がくんと来るのは50代から(笑)。50代になってからは、今までできていたことができなくなっていくことをどのように受け止めるか、そしてそれをどうやって楽しめる方向に切り替えていくか、自分の心と向き合うようになりましたね。