スタイリスト、ミモレコンセプトディレクターの大草直子が着こなしのアイデアや日々の思いを綴ります。
基本的にはカシミヤニットにデニム――が好きなのですが、時に「緊張するコーディネート」をするようにしています。緊張する、というのは、可動域がいつもと違う、厳しいシルエットである、少しだけ無理をしないときれいに着こなせない。そんな着こなしのことです。
昨日していたのは、まさにそんなおしゃれ。エリカ カヴァリーニというイタリアのブランドのワンピース。(夏の終わりは1枚で着ることが多いのですが、以前三尋木奈保さんと待ち合わせをしていて。「裸の人が歩いてくると思った」と言われた1着)もちろん秋なので、アンダーに薄手のタートルネックカットソーを合わせていますが。このワンピース、ストレッチが全く入っておらず、かつ、私のジャストサイズなので、着た朝から、自宅に着いて脱ぐ夜まで「ずっと締め付けられている」(笑)。そしてタイトスカートなので、脚も大きく開けない。さらに、マノロブラニクのブーツは、歩きやすいけれど細いヒールが7cmくらいあるので、やはり歩き方がいつもよりもエレガントに、そして注意深く。Diorのバッグだって、バンと椅子に置くわけにもいかず、どうしたってエレガントでいることを、気を付けるようになります。
面倒くさい。毎日は無理。
けれど、私にとっては時に必要。パワフルな服や小物が伝えてくれる、ある種の厳しさ、そして強さ、エネルギー。服を着ること。着ることが伝える、私の内面や女性像――を、おざなりにせず、深く考えることが、私自身にとって、そしてスタイリストという仕事にとって、なくてはならないものなのです。そして、あえて厳しい服を着ることでわかる、優しい服、柔らかい服、受容力のある服の意味にもっと心を寄せ、自分らしく着ることができると思っています。
エリカ カヴァリーニのワンピースは3年目、マノロブラニクは5年目、Diorのバッグも3年目。このままきっと、クローゼットにあり続ける「厳しい服・靴・バッグ」です。
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