社長の豹変、毎日浴びせられる叱責。それでも、仕事にはやりがいを感じていたノリエさんは、なんとかコツコツと業務をこなすことに専念。しかしその後、前触れもなく事態が急変します。

社長室に呼び出され、「このままじゃ更新できないよ」と言われたのだ。ショックを受けたが、「この社長とはやっていけないだろうな……」と思っていたノリエさんは、宣告にうなずいてしまう。正社員雇用なら「更新」という言葉はおかしいが、そんなことに気づく余裕もなかった。

「たしかに試用期間があるのは承知していましたし、毎日責められて、冷静な判断ができなくなっていたのだと思います。『解雇通知書を今度渡す』と聞いて、帰宅しました」


ノリエさんの雇用条件は、入社時から「6ヵ月は試用期間」とあったものの、「福利厚生についての記載もあり、『正社員』としての採用」でした。


労働局で言われた、意外な一言

 

新卒に限らず、たとえ社会人経験があったとしても、会社の言い分が正しいのか、理不尽な仕打ちかをすぐさま見抜くことは、簡単なことではないかもしれません。仕事に「やりがい」があれば、なおさらです。「とにかく一度労基に電話したら?」と母親からアドバイスを受けたノリエさん。電話で確認すると、今回のような「行為や事実の正当性を判断するような必要がある場合や、ハラスメント事案など」は、労働基準監督署ではなく「労働局」に相談した方がいい、と教えてもらいます。

 

「これ、お金がとれる案件だと思いますよ」
労働局に行ったノリエさんを待っていたのは、局員からの前向きな言葉だった。

労働局には、企業と労働者の間に入ってあっせんを行う機能があり、社長の対応を「不当解雇」ととらえて慰謝料を請求すれば、会社が拒否した場合でも、労働局のあっせんを通じて慰謝料の交渉をすることができるそうだ。局員に念を押された「通知書をもらう際のやりとりを録音しておくように」と「通知書にハンコを押したり、やめる気があると言ってはいけない」を胸に、解雇通知書の受け取りに臨んだ。書面上、解雇理由には「態度がふてぶてしい」と書いてあった。誰が見てもめちゃくちゃな理由だ。