ですから、その土砂を丹念に取り除いて差し上げる行為こそ、母親の供養になるとは思いませんか。

肉体を離れた世界に逝ってしまった母親には、もはやどうすることもできない土砂の始末。それを先延ばしにしていては、モノへの固着からようやく解放され、魂の世界に旅立った母親の未練を、かえって呼び起こすことになりはしませんか。

また、私はこうも考えます。確かに母親が遺したモノたちは、「モノを捨てたくない」という母親の信念の証拠品でしょう。けれど、その信念を証拠の品々とともに受け継ぐか、受け継がないかは、あなた自身が決めること。その選択・決断は、あなたの領域であり、あなたの自由。そうではありませんか?

 

身内の死、親の死とは、悲しく辛く、心がひどく痛むもの。しかも、それがあっけなく突然であればなおのこと。でも、これは私たちが避けては通れないことでもあります。そう、いずれにしても私たちは親から卒業していかなければなりません。

ならば、なおのこと心を奮い立たせて断捨離を。「土砂」を丹念に、時には大胆に取り除いていきながら、母親が遺した「砂金」を発掘発見していくのです。そしてその土砂は、あなたにとってはゴミそのもの。潔く始末すれば良いのです。

あなたが土砂の中からよみがえらせたその砂金こそ、あなた自身が見事に勝ち取った「親からの卒業証書」となるに違いないでしょう。

 


著者プロフィール
やましたひでこさん

一般社団法人 断捨離®︎代表。東京都出身。早稲田大学文学部卒。学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片付け」に落とし込み、誰もが実践可能な自己探訪のメソッドを構築。断捨離は、思考の新陳代謝を促す発想の転換法でもある。処女作『断捨離』に続く、『俯瞰力』『自在力』(いずれもマガジンハウス)の三部作をはじめ、著作・監修を含めた関連書籍は国内外累計500万部を超えるミリオンセラーになる。『モノが減ると心は潤う 簡単「断捨離」生活』『モノが減ると家事も減る 家事の断捨離』『モノを減らして愉快に生きる 定年後の断捨離』(いずれも大和書房)はロングセラーに。近著には『1日5分からの断捨離 モノが減ると時間が増える』(大和書房)がある。著書はヨーロッパ諸国をはじめ21言語に翻訳されている。

『モノ・人・心の悩みが消えていく 断捨離道場』
著者:やましたひでこ 講談社 1430円(税込)

“断捨離の第一人者”やましたひでこさんが、相談者の「捨てられない」お悩みに一問一答でわかりやすく回答! モノを捨てる・溜め込まないための方法論をはじめ、モノと向き合うからこそ見える様々な“しがらみ”を手放す方法まで、人生が身軽になるヒントが満載です。捨てることが苦手な人も、読んだそばから断捨離したくなってくる一冊!


構成/金澤英恵
この記事は2021年12月5日に配信したものです。
mi-molletで人気があったため再掲載しております。

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