1位:映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(Amazon Primeにて配信中)

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』 写真:Amazon Prime Video作品サイトより

思い入れがありすぎる故に熱くなりすぎることをお許しください。

 

私、10年くらい前に初めてエヴァを観るまでは、この作品に対してすごく偏見があったんです。萌え系の女の子が出て来る、いわゆるオタク向けのアニメなんでしょ、って。だけど違った。

この作品の何に私がいちばん感動したかって、それは庵野監督の作品づくりにかける情熱なんです。観たことのないアニメ体験。一度観たくらいでは消化しきれないくらいの情報量とこだわりと技術が詰まっている。

ストーリーを解説するような作品ではないと思うので(ディープなファンがたくさんいるこの作品を私などが語るのもおこがましいですし)、私の感じたことのみをお伝えすると、私がシンエヴァから感じたのは、「喪失と再生」というテーマ。

この作品を待っている10年くらいの間に、この映画の登場人物たちのように、誰もが自分の人生の「サードインパクト」が起きて喪失を免れなかったのではないか。そして主人公のシンジのように闇をさまよい、そこから再生した。絶望から立ち直るためには、絶望を味わい尽くすしかないということも学んだ。そんな風に勝手に感情移入して、大号泣。

そして庵野監督が制作途中で仕事仲間から詐欺にあったり、コアなオタクファンから「死ね」と誹謗中傷されて鬱になったりした暗黒の時期を経て、奥様である漫画家の安野モヨコさんの愛に支えられて「愛を覚えた」……。劇場版の最初から観ていると、そういったことがはっきりわかるくらい、作品のトーンに変化があるんですよね。庵野監督もこの作品を制作する期間の中で、長い闇のトンネルを抜けたんだな、と思いました。きっと喪失と闇が深かったからこそ、光も成長も大きくなるんだな、って。最後のシンジの晴れやかな表情に、そんなことを感じました。

新劇場版シリーズでは、毎回宇多田ヒカルさんの曲も作品の感動を盛り上げてくれるのですが、今作の「ワン・ラスト・キス」も最高。エンドロールで流れて来たとき、鳥肌が立ちました。

また、作品を見終わったとき、「庵野監督お疲れ様。あの複雑な世界観の中で、よくここまで最後にすべてを回収できたな……」という気持ちと、「もうエヴァはほんとにこれで終わりなんだ」というさみしさが押し寄せ、1週間くらいはずっとエヴァのことを考えながら「ワン・ラスト・キス」をリピートするという「エヴァ・ロス」状態に。自分ではそこまでのエヴァ・ファンではないと思っていたので、思った以上に自分がエヴァのことを好きだったというのに気づいて、びっくり。

エヴァってすごく難解な作品で、私は一度観たあとに「シトチャンネル」というYouTubeの考察動画と庵野監督が出演した「プロフェッショナル」で復習してから「おかわりシンエヴァ」したのですが、2度目も結局、映像と創造力のすごさに圧倒されて、考察だとか細かいことはどうでもよくなってしまいました。でもよりシンエヴァを楽しみたいなら、「シトチャンネル」とNHKオンデマンドの「プロフェッショナル」で予習してから鑑賞するのもおすすめです。



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