血糖値が異常でも糖尿病の有無はわからない


血液検査では、貧血や多血、肝臓の障害、コレステロール値、血糖値の異常がわかります。

肝臓の検査は「肝機能検査」と呼ばれるので、よく「私の肝臓の機能は大丈夫ですか?」と聞かれますが、この血液検査で「肝臓の機能」がわかるわけではないことに注意が必要です。わかるのは「今まさに肝臓の細胞が壊れているか」だけで、機能が低下しているかどうかまではわかりません。

また、血糖値はその瞬間の値を見ているだけなので、ランダムな血糖値がとても高ければ「糖尿病かな?」と調べるきっかけにはなりますが、これだけで糖尿病があるかどうかまではわからないことにも注意が必要です。

 

尿検査では、血液検査ではわからない腎臓の障害の有無を検出できることがあります。腎臓に炎症があると尿に血が混ざったりし、また、腎臓のろ過機能に障害が出ると尿の中にタンパク質が漏れ出たりするのです。これらを尿検査で検出することができます。ただ、障害の「程度」まではわかりません。

 

健康診断は健康を支えるツールの一つ


心電図検査では、心臓の壁が異常に厚くなっていないか、過去に心筋梗塞をやっていないか、不整脈の素因がないか、ということがわかります。

心電図検査の説明をする際に、「不整脈はありますか?」と聞かれることがありますが、心電図はその瞬間、数秒間の心臓の電気信号を検出するだけなので、残念ながら時々出るような不整脈を捉えることができないからです。

1日1回以上出る動悸が不整脈によるものかを調べるには、例えば、24時間装着する「ホルター心電図」が必要になります。将来的にはApple Watch(アップルウォッチ)などがその役目を果たせるようになるかもしれません。また、あくまで電気信号の検査なので、弁膜症など、心臓の形の異常も捉えることはできません。

一般健康診断でいろいろな検査を受けることで、またその名前からも、なんでもわかるように思われるかもしれませんが、このように限界があります。異常がないかをざっくり知るために使われるのがこの健康診断です。

「健康診断正常=健康」でも「健康診断異常=不健康」でもないのです。健康診断とその他の道具もうまく使って、健康の支えの一つにするというぐらいの感覚でいることが必要とされます。

ただ、いくつかの健康問題は必ずしも「症状」として出るわけではなく、検査の異常で初めて見つかることもあるため、このような検査にも価値があります。一方、実際に全ての検査に本当に価値があるかというと、疑問が残るところもあります(それについてはまた別の記事で説明したいと思います)。