「二次健康診断」で異常の理由を調べる


ここまで一般健康診断は、「健康状態を大雑把に調べる」ためのものだというのを見てきました。このような検査は「スクリーニング検査」と呼ばれています。

「スクリーニング」というのは、症状のない人から病気を拾い上げることを指します。異常を「拾い上げる」だけで「診断」ができるわけではないので、健康診断で異常が出たら、必ず「二次健康診断」を受ける必要があります。

ここで注意が必要なのは、あなたが健康診断でひっかかった「異常」は、重大な病気の見逃しがないようにややオーバーに拾い上げられたものだということです。拾い上げがオーバーだと正常な方にまで異常のレッテルを貼ってしまうことになりますが、拾い上げが少なすぎると見逃しが多くなります。検査をした上での見逃しが増えては困りますので、健康診断ではオーバーを許容するのです。

すなわち、ここで「異常」と出たから病気がある、治療が必要である、ということではありません。何もする必要がない、経過観察のみでよい、ということもよくあります。ただ、病気の可能性があるので、二次健康診断に進んでしっかりと調べる必要があるのです。

「健康診断の結果がいい=健康」とは限らない!一般健診の限界とは?【医師・山田悠史】_img0
 

二次健康診断は、検査結果の異常がなぜ起こっているかを明らかにする目的で、病院で保険診療として行われます。例えば「血糖値が高い」となれば、追加でHbA1cと呼ばれる確認検査を病院で行い、糖尿病があるかどうかを確認します。糖尿病と診断されれば、治療が開始となります。

 

二次健康診断は法的な側面から言えば、義務ではありません。しかし、二次健康診断がなければ、せっかく受けた一般健康診断もただの徒労に終わってしまいます。先ほど「スクリーニング」という言葉を説明しましたが、健康診断で見つかる「異常」は、ほとんどの場合は自覚症状を伴わないため、当事者にとっては、病院に行く意義を見い出しにくいものです。

しかし、残念ながら、高血圧や脂質異常症といった慢性疾患は多くの場合、症状が出ないという現実があります。そしてその治療は、今のあなたの症状をよくする、という目的のものではありません。5年後、10年後のあなたを病気から守る、未来への投資です。

そのような投資を前もってできるかどうかが、将来の自分の健康を守れるかどうかの分かれ目になりますから、やはり症状がなくても病院を訪れるべきなのです。


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参考文献
山田悠史. 【解説】あなたの「健康診断」は本当に必要ですか?. NewsPicks. https://newspicks.com/news/4153632 (accessed Jan 5, 2022).
1 労働安全衛生法(安衛法)|安全衛生情報センター. https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-1/hor1-1-1-m-0.htm (accessed July 14, 2019).
2 労働安全衛生規則(安衛則) 目次|安全衛生情報センター. https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-1-m-0.htm (accessed July 14, 2019).
3 Obesity: preventing and managing the global epidemic. Report of a WHO consultation. World Health Organ Tech Rep Ser 2000; 894: i–xii, 1–253.

構成/中川明紀
写真/shutterstock


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