いじめは職場や経営者への不満をそらすために機能していた!

 

ではまず、近年の職場いじめの特徴を見ていきましょう。坂倉さんは本書の中で、大きく三つのパターンに分類されると述べています。

「まず、一つ目が『職場ストレス発散型』だ。つらい労働によって生じたストレスを、その労働環境に責任のある会社や経営者に向けるのではなく、職場の同僚や部下をいじめることで発散するもので、結果的に不満の矛先をそらす『効果』がある。

 

二つ目が、『心神喪失型』だ。長時間労働に伴う理不尽ないじめによって思考を停止させ、『心神喪失』状態に陥らせることで、労働者が現状に疑問を抱かなくなり、黙々と過酷な労働に従事するようになるというものだ。

三つ目は『規律型』だ。経営の論理に従順でないと見なされた労働者が、『いじめても良い』『人として扱わなくても許される』対象とされ、激しい職場いじめの標的となる。『矯正』『排除』『反面教師化』を通して、他の労働者たちは、自分を会社にとって役に立つ存在と定義し、『能動的』に働くようになる。あらかじめ断っておくと、ここでいう『規律』とは、ワンマンな経営者や上司による命令や、がんじがらめの社内規則があるということではない」

坂倉さんはこの三つのパターンを合わせて「経営服従型いじめ」と呼んでいます。その名が示す通り、三つとも経営する側にとって都合のいい人間(労働者)を作る、もしくは残すために機能していることが分かります。職場からいじめがなくらないのは、悪意ある人間が多いといった単純な話ではなく、日本の組織および社会の構造上の問題であったのです。