更年期の女性が標的に!職場いじめの背景にあるものとは?


では、実際に労働の現場ではどのような「いじめ」が起こっているのでしょう? 昨今の女性労働者が受けているいじめの特徴を、『大人のいじめ』の著者・坂倉昇平さんにお聞きしました。

坂倉昇平(さかくら・しょうへい)さん
1983年生まれ、静岡県出身。ハラスメント対策専門家。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。2006年、労働問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」を設立。08年、雇用問題総合誌「POSSE」を創刊し、同誌編集長を務める。現在は「POSSE」理事として、年間約5000件の労働相談に関わっている。共著に『18歳からの民主主義』(岩波新書)、『ブラック企業vsモンスター消費者』(ポプラ新書)。

──女性からのいじめ相談で特徴的なことはありますか?

大きく分けて二つの特徴があると思います。一つが家事負担に起因するいじめ。パートナーがいたとしても家事・育児・介護の大部分を女性が担っているパターンがいまだに多く、たとえば親の介護のために仕事を休もうとすると「なんで休むの?」「仕事を休めて楽でいいよね」と職場で嫌味を言われてしまう。そういった相談が多いです。

 

──家事負担の重要性を職場では理解してもらえないのですね。

無理解な職場がすごく多いというのが実感です。家事・育児・介護は人間が生きていく上で必要なことですし、社会全体において誰かがやらなければいけないことなのに、経営の論理ではないがしろにされてしまう。そこで苦しんでいる女性が多いと思います。もう一つの特徴として挙げられるのが、特に40~50代に顕著なのですが、「更年期障害」に起因するいじめです。

──更年期障害や月経によるからだの不調は、男性には理解されづらいでしょうね。

そうですね。しかも、更年期障害の場合は年齢に偏りがあり、程度にも個人差があるので理解を得るのがより難しいでしょうね。とはいえ、問題の本質は女性労働者に対して、多くの男性と同じように健康や家族を犠牲にしてでもパフォーマンスを求めるところにあると思います。女性には非正規雇用の方も多いのですが、昨今は正規雇用者並みの働きを求められますし、正規雇用ならなおさらで、同じ立場の男性並みに休みを取らず、残業も厭わずテキパキ働くことを求められてしまう。体調の良し悪しに関わらずそれができないと嫌味を言われ、非正規雇用の場合は契約が終了してしまうという悲しいことが起きています。