「もう多様性とかどうでもいいや……」と挫けそうになったアナタ。そこで最後に見ていただきたいのが、『クィア・アイ IN JAPAN!』なのです。このシリーズは、もともとは『クィア・アイ』として2018年からアメリカで配信されていたリアリティ番組。見た目やジェンダーなど様々なコンプレックスから自分に自信がない人たちを、“ファブ5”と呼ばれる5人のゲイたちが、料理、インテリア、美容、ファッション、そしてカルチャーと、多方面からアプローチし内面・外面ともに変えていく、というもの。その日本版として、2019年から配信スタートしたのが『クィア・アイ IN JAPAN!』です。

 

毎回彼らが口にする、「人は何歳になっても変われるし、新しいことを学び続けられる」「本当の自分を誇りに思うべきだ」といった言葉にうるっとくるのですが、とくに日本版は、同じ日本人が抱えるコンプレックスや苦悩を扱っているだけに、共感性が高く、より彼らのストレートな励ましの言葉が胸に刺さってくるのです。

たとえば姉の病死をきかっけに「女を捨てて」がん患者に尽くしている50代女性。閉鎖的な日本社会で生き辛さを感じるゲイの男性。子供の頃のいじめがトラウマとなり、イラストレーターとなった今も自分の身体を描けないという20代の女性etc. そんな彼・彼女たちが、ファブ5の手によって自信を取り戻し、新しい自分に挑戦し、勇気をもって変わっていく姿は、他人事と切り離して見ることができず、何度見ても懲りずに嗚咽してしまうのです。

「自分より優れた面がお姉さんにあったと思ったとしても、あなたの命が劣っているわけじゃない」、「どんなにネガティブなことを言われても、自分が思っても、それに打ち勝って自分の中の美しさを見てほしい」などなど。そこには、誰かと同じになる必要なんてない、あなたはありのままで美しい、という多様性のポジティブな側面がこれでもかというほど詰め込まれている……。

もちろん、現実はこんなふうに全てを受け入れてくれる人たちばかりではないでしょう。それでも少なくとも、なぜ私たちが多様性のある社会を目指しているのか、そして向かうべき方向はどこなのか、私はこれらの作品がそのヒントをくれているような気がしたのです。
 


文/山本奈緒子 構成/藤本容子

 


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