“未知なる世代”同士が、相互理解を深められたら


――管理職やエグゼクティブ職を手放してゼロからスタートする人も、本書ではたくさん出てきます。そう考えると、年齢に囚われずチャレンジさえすれば、本当に色々な選択肢があるのだなと。

「モダンエルダー」は肩書きや役職に関係なく、この人の言うことだったらきっと正しいだろうからついて行きたい、と思われる人物像ですからね。年長者と若者が共存し、補い合い、楽しく仕事していくための方法はたくさんある。そのロールモデルがたくさん紹介されているので、今の職場で悩みを抱えている40代、50代の方にはぜひ読んでいただきたいなと思います。

 

――私自身は40代ですが、自分より年齢が上の人たちや、エグゼクティブな人たちもキャリアについて深く悩んだり、葛藤するのだなと知って、ちょっと気持ちが軽くなりました。

そうですよね。逆に今職場にいる20代、30代の若者たちから見たら、私たち40代以上は悩みなんてないだろうと思われているかもしれないですよね(笑)。そういう意味では、「上司が何を考えてるかわらない」とモヤモヤしている若者にもおすすめしたいです。上司から「聞いてないよ!」としょっちゅう言われている人は、上司の机にそっとこの本を置いておくといいかも(笑)。解説を寄せてくださった外村仁さんも、上司にプレゼントするという提案を書いてくださっています。でも、「モダンエルダー」を頼ったエアビーアンドビーの若きCEO、ブライアン・チェスキー氏側の視点で読むと、私も職場の年長者を頼ってみようかな? という気持ちが湧いてくるかもしれませんね。

 

身近な相手で「若者に教わる」を練習するのもアリ

 

――本書でも書かれていましたが、人生100年時代で働く期間が長くなると“未知なる世代”同士が日々顔を合わせる職場も、どんどん増えてくるということですもんね。

私には中学生の息子がいるんですが「今TikTokで誰がすごいの?」と質問すると、「えっ、そんなことも知らないの?」ってマウントを取られるんです。ちょっとイラッとするんですけど、こちらも負けじと「徳川家康ちゃんは知ってるよ」と手持ちの微々たる知識で対話を試みると、「マジで! 意外とやるじゃん」なんて褒めてくれることも(笑)。家庭で自分が知らないことを子どもに教えてもらうのも、世代や年齢を超えた関係性構築の練習にはいいかもしれないな……と個人的には感じますね。

『モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方』
著:チップ・コンリー 訳:大熊希美、関 美和 解説:外村 仁
日経BP 2200円(税込)

人生100年時代、職場の賢者としてずっと尊敬される「モダンエルダー」(新しい年長者)としての働き方とは? ブティックホテルの経営という、いわゆる“アナログ”の現場から、シリコンバレーのスタートアップ「エアビーアンドビー」に52歳で入社した著者。二回り以上年下の若者たちと一緒に働くことでわかった、40代、50代以降になってなお活躍できる人物像を、著者の実体験と豊富なロールモデルを元に紐解きます。


撮影/吉永和久
取材・文/金澤英恵