やっぱり気になる……アラフォー以降の恋愛事情は?


小説『エストロゲン』の登場人物たちは、皆恋愛や性に貪欲でした。実際アラフォー以降の恋愛事情はいかがでしょうか?

甘糟:私の周りではまだまだ恋愛したいという50代もいるし、もう恋愛はいいかなという40代だっています。バツイチの友人は離婚した男性がこれから恋愛市場に戻ってくる! なんて期待してますよ。他にも恋愛は抜きにしたセックスを楽しみたいなんて大胆な打ち明け話も聞きましたし。つまり、人ぞれぞれ、いろいろですよ。

ただ、まあ50代後半になると恋愛というよりは生活のパートナーが欲しい感覚の人が多いかな。

 

スー:私の周りの離婚経験のある友達を見ていると、もう恋愛にはほとんど興味がないという人が多いです。でもそれは、恋愛に懲りたとか疲れたというわけではなく、単純に恋愛以外に楽しいことを見つけたから。

例えば40代後半でゴルフを始めた友人もいるし、仕事がきっかけで地方に行った友人もいます。ただ彼女たちって、昔から恋愛への優先順位が低かったタイプなので、変わったわけではないです。逆に、恋愛を積極的にしていた子は今もそのまま。人って年齢ではそんなに変わらないですから

甘糟:本質はちょっとやそっとじゃ変わりませんよね。性欲は変わっても。そうそう、同世代の友人に『セックス・アンド・ザ・シティ』のサマンサみたいだった女性がいますが、さすがに最近は欲望が減ったらしいです。「自分が自分じゃなくなったみたい……」と嘆いていましたよ。

 


「何をすべき」というマニュアルは存在しない


ここまでのお話を聞いていると、やはりお二人は「年齢に囚われていない」という点が、充実した人生を送る秘訣なのかと感じました。最後に、ミモレ読者へメッセージをお願いします。

スー:もちろん、歳を取ることによっていいことばかりが得られるわけではないですよ。ただ単に年齢が重なっているというだけの話で、すごくポジティブなわけでもなければネガティブでもない。もっとフラットに捉えてもいいのではないでしょうか

40代でも50代でも、明るく生きるためには、これをやらなきゃいけない! みたいな決まりごとなんて実際は存在しなくて、各々が模索しなくてはならないこと。模索すれば、必ず扉は開かれるとは信じていますが。

20代の頃を思い返してみると、いろんなことに関して「これをやればこうなれます!」と言われ続け、全て信じてきたけれど実際はそうではなかった……ということがたくさんありましたよね。

私が30代の時は、40代や50代の方たちが「年齢を重ねれば重ねるほど楽しい」と雑誌などで話しているのを読んで、そんなにうまいこといくのか? と疑問を抱いていました。

でも実際、当然ながらそんなに都合のいいことばかりではないです。私がこの年になって言えるのは、「体力も精神力も衰えていく。だけどそれを補う作業をしながら、まだまだ楽しめる部分もたくさんあるから楽しんでいく」ということですね。

甘糟:若々しい50代もいれば、老成した40代もいるし、若々しいばかりがいいわけでもない。当たり前ですけれど、そう思います。

私はたぶん、ミモレの読者より年上でしょうけれど、読者の方たちには歳を取ることをそんなに怖がらないで、と言いたいですね。健康に対する不安とか気力体力の衰えとか、もういろんなことが襲ってきてシワだのシミだの気にする余裕も無くなるくらいだけれど、「経験」や「過去」という財産は増えていくだけ。過去を財産にするかどうかは自分次第です

私は器が好きなんですが、先日、バカラのアンティークグラスを買いました。1930年代のものだそうで、最近の新しいものにはないエレガンスがあるんですよね。
ゆるやかな曲線の美しいグラスを眺めては、こういう女性になりたいなあと思っています。

 


今回の対談を通して気づかされたのは、 “幸せな40代や50代を過ごすためには何をすべきか”というマニュアルは一切存在しないということ。

20代や30代の頃に、「女性はこう生きるべきだ」という理想の女性像をさんざん押し付けられてきたという人も多いでしょう。

しかしこれからは、女性の生き方を理想のイメージに当てはめようとする風潮からは脱却すべきだと感じました。

どんな人生を歩むのかは自分自身の中に答えを見つけるしかないのです。そして当然のことですが、年を重ねるのはごく自然なことで、悲観的に構える必要は全くないのだとも改めて教えてもらいました。
 

<書籍紹介>
『きれいになりたい気がしてきた』

著 ジェーン・スー
定価 1400円(税別) 光文社

40代も終わりかけになって、ようやく女が楽しくなってきた――人気コラムニストが孤軍奮闘! 自分の人生のためにある“ちょうどいい美”とは?
好きな自分でいるための「きれい」について改めて向き合い、もがいたり気づいたり楽しんだり。これから40代を迎える方にも、いままさに同年代という方にも読んでいただきたいエンパワーメント・エッセイ。自分に手をかけてあげたくなる一冊です。


取材・文/小澤サチエ
撮影/大坪尚人
構成/山本理沙


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