「親族は財産を使い込む」という理由に納得してはいけない

 

ところが、制度開始から20年も経たないうちに、真逆の状態となってしまいました。その理由として言われているのが、親族が成年後見人になると不正が多発するからということです。確かに、財産を適切に管理する成年後見人になったにもかかわらず本人の財産を使い込むケースが後を絶ちません。

 

ただ、本当にそれだけが理由でしょうか。不正だけで言えば、専門職であっても不正が発覚し成年後見人を解任されるケースが報告されています。親族による不正の方が件数としては多いですが、専門職による不正も相変わらず続いています。

見直すべきは、不正防止ばかりではないようです。

成年後見人のなり手として専門職に頼るばかりで、親族後見人をサポートする体制があまりにお粗末になっていないでしょうか。そもそもサポート体制があるかすらも疑問です。

親族であれ専門職であれ、不正防止の対策を取ることは当然です。しかし、親族後見人に対しては、いつでも相談できる窓口を設置する、定期的に出す報告書を簡素化する、報酬を受けるよう促す、などもっと創意工夫ができないものか疑問がわくばかりです。国や裁判所は、成年後見制度運用に対して想像力や共感力に欠けています。

硬直化した制度がますます国民の関心を遠ざけてしまっているのです。