迷走神経刺激、こんな場所への刺激には注意が必要


山田:迷走神経刺激は、基本的に、「外側から無理やりブレーキを踏ませる」、ということです。ですので、人によっては、迷走神経刺激が危険になることも十分ありえます。
たとえば、踏んではいけない状況でいきなりブレーキを踏んでしまう。すると、急に血圧がストンと下がってしまい、意識を失って倒れてしまうこともありえます。

碓氷:それは怖いですね。

山田:あるいは、心臓に持病をお持ちの方が突然ブレーキを踏んでしまうと、心臓に異常をきたす可能性もあります。
氷水に顔をつけるぐらいなら、害は少ないかもしれません。ですが、たとえば眼球を押す、首の辺りを何かで刺激するなど、やり方が過激になってしまうのは危険です。それだけブレーキの踏み方が過激になりますし、健康への被害も考えなくてはいけません。

基本的に、アクセルやブレーキというのは自分の中でうまく調整できる、ということを覚えておいていただきたいですね。コーヒーを飲む、瞑想をする、睡眠をとる。または、お笑い番組を見て笑う。そういった、安全かつ間接的なことで、人は自然にブレーキを踏めるようになっています。
ですので、医師としては、無理して外側から刺激をするより、自然な方法でおやすみをとることをおすすめします。

碓氷:そうですよね。たとえば、「迷走神経を刺激する○○」という触れ込みのサービスや商品は、「本当に迷走神経に直接刺激できるの?」と、少し疑問を持ってしまいます。

 

山田:そうですね。迷走神経刺激は、ビジネスに繋がりやすい側面があるかもしれませんね。

碓氷:キャッチーな言葉だというだけで、気になってしまいそうですよね。

山田:以前、この番組で取り扱ったヤクルト1000でも話題に出ましたが、コロナのパンデミックや生活の変化で、ストレスを抱えている方が多いのかもしれません。

碓氷:ヤクルト1000の論文については、論文自体の価値は高いけれど、医学的には健康に影響があるとは言いきれない、と解説していただきました。けれど、「ヤクルト1000が効くかもしれない」と思う気持ちや、飲むことを否定する必要はないという解説は、その通りだと思いました。
ただ、迷走神経刺激は、少し気をつけないといけないですね。

山田:そうですね。リスクは考えなくてはいけません。この「医者のいないラジオ」で繰り返しお伝えしていることですが、どんなことにも益と害があります。
ですので、「○○が有効だよ!」という宣伝があってもすぐに飛びつかず、ぜひ、益と害の天秤を持ち出して考えていただきたいですね。メリット、デメリットを一度きちんと整理して、その上で次の一歩を進めていただくとよいのではないでしょうか。

碓氷:たしかに。「医者のいらないラジオ」も、聴くメリットもあるけれど、料理中に聴いていたら、間違えてちょっと塩を入れすぎちゃう、なんてデメリットもあるかもしれませんよね(笑)。

新里:私は、聴きながら料理をしていて、オーブンの設定温度を間違えましたよ。

碓氷:迷走してますね(笑)。

山田:そんなデメリットも考慮した上で、「医者のいらないラジオ」を聴くかどうかをご判断いただければいいかな、と思います(笑)。

碓氷:大事なことですね(笑)! 本日もありがとうございました!

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写真/shutterstock
構成/新里百合子
 

 


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