うららと対極に位置するキャラクターたちの活躍


脇を固めるキャラクターたちも、魅力的でした。たとえば、うららと同じ学校に通う紡(高橋恭平)と英莉ちゃん(汐谷友希)。この2人がいたからこそ、うららが持つ“影”をより濃く映すことができたのだと思います。

 

うららの幼なじみである紡は、類まれなるいいやつ。学校のマドンナ・英莉と付き合っていて、いわゆる“陽キャ”と呼ばれる男の子です。だけど、クラスの隅にいるタイプのうららにも優しい。

底知れない優しさを持つ人といると、苦しくなることってありませんか? 自分の意地悪な部分を、思い知らされるような気がするというか……。筆者も最初は、紡を見ていて苦しくなる瞬間がありました。彼のまっすぐさが、あまりにも眩しくて。

しかし、眩しいだけだった彼が、人間味を見せた瞬間に、グッと心を奪われました。うららも、彼の影響を受けてどんどん変わっていくのでしょう。紡は、作中では描かれていない“未来”を想像させてくれるキャラクターでした。

そして、うららが抱く英莉に対する“もやもや”は、共感した人も多いと思います。なんでも持っていて、なんでもできる。いつもたくさんの友人に囲まれているし、イケメンの彼氏までいる。さらには、夢まで持っていて……。そんな彼女が、BL漫画の沼にハマってしまうのです。もちろん、誰が何を好きになったっていい。でも、うららは唯一自分が自分でいられる世界を奪われた気分になったのではないでしょうか。

しかも、英莉はクラスメイトとBLの魅力を共有することができる。「BLにハマっている自分」をひた隠しにしていたうららにとって、あけすけにBLの魅力を語る英莉の姿には、悔しくなるものがあったはず。紡と一緒で、意地悪な感じが皆無なのが余計に苦しいんですよね。

けれど、うららには雪とともに過ごす“縁側”という名の“居場所”がある。学生時代って、学校がすべてになりがちだけれど、少し世界を広げてみれば、居場所になってくれる人はたくさんいるんです。

『メタモルフォーゼの縁側』は、“推し”がいることの尊さを描きつつ、鬱屈を感じている学生たちへのメッセージも込められています。そして、老いることに対してプラスのイメージを抱かせてくれる。

年を取るのは、いいことばかりではないかもしれない。それでも、雪のように何歳になっても“ときめき”を感じることができる。生きていてよかった! と思える日だってくる。『メタモルフォーゼの縁側』は、全世代の人々に“希望”を与えてくれる作品です。

 

 


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