ワクチンは、オミクロンにも効くのか? 子どもには?


現在感染が増えている状況で何ができるかと言えば、まず対象となっている方はしっかりと3回目の接種を受けていただくことです。万が一感染してしまったときに、自分の身を守ることに繋がります。BA.2のデータにはなりますが、2回接種でのワクチンの入院を予防する効果は24%まで低下していましたが、3回目接種後には、52-69%まで回復していたことが知られています。2回接種の効果というのは、それほど低下してきてしまっているのです。
ちなみに4回目接種の対象は、今のところ、高齢の方や持病のある方に限定されています。というのも、4回目接種の上積み効果が、3回目までと比べると小さいようなのです。

 

4回目が対象になっている方は、もちろん受けていただくとよいのですが、そうでない方は、まずは3回目の接種をしっかり受けていただければ、慌てる必要はないと思います。逆に言えば、3回目での上積みが有効性という意味でも、効果の持続性という意味でも大きい、ということです。

大人だけでなく、5-11歳のお子さんのオミクロンに対するワクチンの有効性に関しても、2回接種することが、効果を発揮する上で大切なことがわかる論文が発表されました。この論文によると、BA.5以前のデータではありますが、1回接種のみの場合の感染予防が24%、入院予防が42%であるのに対し、2回接種では感染予防が65%、入院予防が83%との結果が報告されました。

完璧なものではないにせよ、多かれ少なかれコロナから身を守ってくれる有効な方法です。

「ファイザー、モデルナなど、種類によって効果に差があるか?」と聞かれることもありますが、あまり大きな違いはありません。現在、ファイザーやモデルナは、オミクロンにも対応できるようなワクチンを開発しています。オミクロンとオリジナルの株を混ぜたハイブリッドなワクチンを開発し、実際に研究も済んでいます。ただ残念ながら、ここでいうオミクロンとは、BA.1のことです。
BA.1はもうすでに駆逐され、BA.5に置き換わっています。そんな中、実はアメリカでは、モデルナがBA.5に対応するワクチンを作り始めた、というニュースも出ていました。ワクチンを製造する側の研究もかなりスピードアップしています。

mRNAワクチンという新しい技術によって、より早い対応が可能になっているというのは、本当に大きな財産です。
ウイルスの進化スピード自体も、実は以前から比べれば、そう早くはないのです。流行しているのはずっとオミクロンのままですし、この先も流行の頻度はだんだんと下がっていくのではないか、と予想されています。
今後も新しいウイルスは必ず出てきますが、その間隔が徐々に空いていき、やがては2年〜3年に1回感染流行が起こる、という状態に収束していくのではないか、という楽観的な見方が大方の見解です。

また、コロナウイルスの治療薬に関しても新しいニュースがあります。人レベルでの有効性を見た報告ではありませんが、試験管レベルでは、日常診療の中で頻繁に使用されているレムデシビルやパクスロビドが、BA.5に対しても有効であることが示唆されました。

実生活に落とし込む場合には注意が必要な情報ですが、すでにこれまでの変異ウイルスでも有効性を確認できていることから、期待を持たせてくれる結果ではあります。


連日報道されているように、感染者数の増加で不安を感じる方も多いかと思います。ただ、未知のウイルスに立ち向かうのとは違い、有効な治療薬や、ワクチンという武器を持っている中での感染拡大です。そういった意味では、少し安心できる材料も揃ってきたといえるのではないでしょうか。感染流行には必ず終わりがきますので、あまり恐れ過ぎず、今できる感染対策を心がけ、日々を過ごしていただければと思います。
 

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写真/shutterstock
構成/新里百合子
 

 


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