大学受験時代のポイント

 

自分は文系・自分は理系と決めつけて、触れる知識を限定しないことの大切さをお話しましたが、私が感じた大学受験時代のポイントも、少しだけお伝えしたいと思います。

 

①自分の限界を定めない
「自分は、もともと頭が良い人とは違うから……」と、勝手に自分で「あちら側とこちら側」の線を引くのは禁物です。可能性を拓く決め手は、持って生まれた能力ではなく、挑戦するかしないかです。優秀な人でも挑戦しなければ成果はゼロ。報われないかもしれないけれど、挑戦しなければ何も始まりません。

②友人は競争相手ではなく、助け合う仲間
高校生活は一度きり。得難い経験や楽しい思い出を作れる時期に、「周囲はみんなライバル」と思うのはもったいない話です。受験生同士なら、足を引っ張り合うより、助け合うのが吉。後年になって思い出す記憶が「ギスギス感」であるより「連帯感」であったほうが、はるかにハッピーです。

③日本は一発勝負、海外は総合評価
日本の入試は一発勝負なので、受験までどんなに頑張ったとしても、試験当日にコンディションが悪ければ不合格、という無情な結果になることも。対して、海外の大学は一定の期間を設けて、学力だけでなく、人となりや興味の方向性を深く探ります。「一発」に賭けずに総合点で見てもらえる有難いシステムですが、これまでどのような学び方をしてきたのかが問われる、ごまかしの利かなさもあります。もちろん、点数の出ないところで合否が決まるので「公平」でないという点はあるのですが。

④「受かるため」の頑張りは得るものが少ない
海外の大学進学や、国内大学の推薦入試を意識する人は、学業以外の活動を「合格のため」に頑張ってしまう傾向があります。好印象を持ってもらうために、とくに興味のないことをするとなると充実感が低く、得るものも少なくなります。とくに海外大学は、「その経験で何を得たか」が重要な評価軸となるので要注意。変に合格狙いをするより、純粋に興味を持ったことにいそしみましょう。
 

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私は一般的な勉強法の本はあまり好きではありません。書いてある通りに努力すれば報われるというふうに書かれているものが多いからです。幸運にも私は、家族や先生、そして友人たちに恵まれて自分でも行けると思っていなかった進路を歩むことができました。努力はもちろん必要ですが、中には再現性がないような幸運もありました。ですので、「こうすれば必ずうまくいく」と言えない場合も少なくないと感じます。

一方で、結果につながらなかったとしても、自分の中に納得した形で残る学びの姿勢というものがあると、私は信じています。そして、そういった前向きな学びの姿勢こそが結果にもつながりやすいと、これまで日本とアメリカのトップスクールで学んできた経験から自信を持って言えます。
 

著者プロフィール
前田智大(まえだ・ともひろ)さん

1995年生まれ。大阪府和泉市出身。株式会社Mined 共同創業者、代表取締役。灘中学・高校から米マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学。2018年MIT工学部電子工学科卒業。2020年MIT Media Lab 修士課程を卒業。光学とコンピューターサイエンスを組み合わせて、皮膚の下や曲がり角の先など、見えないものを見るテクノロジーの研究に励み、国際学会で最優秀論文賞を受賞。大学院在学中に、ソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏の「孫正義育英財団」に応募し選抜された。2020年に帰国後、株式会社Minedを起業し、現在は小中学生を対象としたオンライン教育サービス「スコラボ」を開発・運営しながら、講師も務めている。

『灘→東大→MITに合格した私の「学びが好きになる」勉強法 子どもの可能性を開花させる中学・大学受験』
著者:前田 智大 PHP研究所 1760円(税込)

ごく普通の家庭で育ち、家族も本人も「中学受験って何?」と疑問だらけだったという著者が、トップスクールに合格するためにしたこととは? “合格する”ことだけを目的化しない、モチベーションを維持し続ける学びとは? 筆者が幼稚園〜小学校低学年、中学〜高校時代、そして大学受験と、時系列を追いながら考察します。勉強に行き詰まっているお子さんや、海外の大学への進学を目指す中高生に読んでほしい、「自分は何のために勉強するのか」が見えてくる一冊。



構成/金澤英恵