メンバーそれぞれの才能と個性は? チームの軸であるRMは陰陽の「陰」


小島慶子さん(以下、小島):まず、BTSのメンバーそれぞれのミュージシャンとしての才能と特色をキムさんはどのように評価されていますか?

キム・ヨンデさん(以下、キム):これまでBTSは全員で一つのチームを形作ってきましたし、まだミュージシャンとしての才能や個人としての傾向をはっきり見せていないメンバーもいます。だから、全メンバーの特色を同じ分量で話すのは難しいということを前提に聞いてください。

 

まず、BTSで一番重要なメンバーとしてRMとSUGAを挙げたいです。まさに陰と陽のような、真逆のメンバーです。RMはチームの軸としてリーダーシップを担っていて、すごく知的で怒りでさえも論理的に表現しようとするタイプ。一方、SUGAはストレートで率直な人物で、感性やセンスを重要視しています。

また、RMは非常に優れたラッパーです。アイドルの中だけでなく、韓国のヒップホップシーン全体においてもラップのスキルが頭一つ飛び出ていると思います。そもそもHYBEの創業者であるパン・シヒョクさんがBTSというグループを作った時、最初は完全なるヒップホップグループを念頭に置いていて、核心的なメンバーとして白羽の矢を立てたのがRMでした。今に至るまで、BTSの哲学を体現してきた最重要メンバーだと言えます。

小島:私もRMが国連でスピーチする姿を見てBTSに関心を持ちました。誰かに用意された原稿をただ読んでいるのではなく、ちゃんと自分たちが言いたいことを伝えたいというパーソナルな熱意と知性を感じたんですね。やはり、このRMの知的な部分がBTSというグループの存在感や音楽性にも大きな影響を与えていたのでしょうか?

キム:そうですね。もともとRMが持っている一番重要な問題意識はミュージシャンとしての自分自身に対する嫌悪だったそうです。ラッパーになりたかったのにアイドルになったとか、やりたくないことをやらなければならないとか……そういう矛盾を乗り越えるために努力してきたのだと語っています。そんな彼の中に存在する葛藤を音楽を通して伝えているのが「IDOL」や、ソロ曲である「ペルソナ」ですね。なかなか自分が自分を認められないけれど、それを乗り越えて自分を受け入れて愛していくこと。それは「Love your self」というBTSが発信してきたテーマにも繋がります。

小島:RMのソロミックステープ「mono.」も、彼の繊細で内向的で、哲学的に人生をとらえようとしている部分がよく出ている作品ですよね。これから彼がソロで楽曲を出すとしたら、どんなベクトルの表現を追及していくとお考えでしょうか?

キム:RMの今後を予測するのは難しいですね。これ以上何かを証明する必要がない最高のスターになってしまった今、アーティストとして原動力をどこに見いだしていくか? そこは彼自身も悩んでいくことになるのではないでしょうか。ただ彼はアートに関心が高いので、音楽に限らず何らかのカタチで芸術に密接する活動をしていくかもしれません。