女性同士でもわかり合えないことがある


二人の次なる話題は、生理に関する女性同士のコミュニケーションについて。まずは高尾先生が、女性同士でも認識が異なることがあることを指摘しました。

 

高尾 これから職場での女性の比率が増えると、生理や体調にまつわるコミュニケーションは変わっていくと思います。
ただ、女性同士はわかり合っているかというと、そんなこともないんですよ。上司の女性が部下の女性に対して、自分の経験ありきで対応してしまうケースがあります。生理が軽い女性は基本、重い女性のことがわからない。男性だと「そうか、つらいのか」とすんなり受け止めるところも、自分にも生理があるだけに「私はそんな経験をしたことないし、大げさに言っているだけなんじゃないか」と思ってしまうことがあります。
世代の差もあるでしょう。若い世代はいろんな情報にふれて柔軟に考え、自分なりの対処をしようと努めている人が多いですが、年齢が上がるほど生理について教わる機会がなかったし、なんとかしようにも選択肢がなかった。ずっと我慢してきたんです。そこからすれ違いが生じてしまう。上の世代の女性には「生理についての常識は変わるもの」という意識を持ってもらいたいと思います。自分の常識はもう古いのかもしれないという気持ちで、より若い世代の情報に目を向けると、そこで自分も楽になれるものが見つかることもあるでしょう。

高尾 でもこれって生理にかぎった話ではないし、女性同士だけの話でもないんですよね。何であれ、常識は時代とともに変わるものです。

大吉 女性同士のすれ違いが個人差からくる一方で、男性の場合は、妻など自分の身近な人を見て「生理とはこういうものだ」と思っている人がいそうです。

高尾 サンプル数=1であって、全体像ではないってことですね。女性もそういう傾向はありますよ。その場合のサンプルは「自分」で、自分が経験したものを「これが生理」と思うんです。
どちらにしても、自分の知っている例だけを基準にして、相手の生理をジャッジしないよう気をつけたいですね。

 

『ぼくたちが 知っておきたい生理のこと』
著者:博多大吉/高尾美穂 辰巳出版 1540円(税込)

漫才コンビ博多華丸・大吉の博多大吉さんと産婦人科医・高尾美穂先生。NHKの情報番組「あさイチ」で共演した二人が、男性/女性、初学者/専門家という異なる立場から「生理」について語り合います。生理のメカニズム、生理痛やPMS(月経前症候群)の事例から、生理にまつわるコミュニケーショントラブルまでというテーマの多彩さが魅力。女性のかたが読むと、男性の生理に対する「無理解」への理解が深まり、さらにはコミュニケーションを改善するヒントも得られるかもしれません。


構成/さくま健太