男性社会より怖いのは“自分を諦めること”


さて、なぜ和佳が縁もゆかりもない漁港のためにここまでするかというと、そこには過去に経験したある苦い思いが関係しています。和佳は高校生のとき、地毛が茶色いことから黒く染めるよう言われたクラスメイトのために、校則への異議を唱えました。ところが皆、直前まで賛同してくれていたのに、いざとなったらついてきてくれなかった。和佳は仕方なく「すみません」と謝り引き下がってしまったのでした。

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そんな「長いものに巻かれた」経験がトラウマとなっていた和佳。二度とあんなことはしたくない、息子のためにも自分で自分を誇れる母親になりたい……。そう悶々と思い続けていたところに依頼されたのが、漁港の立て直しだったというわけです。

 

つまり、これは和佳にとって千載一遇のリベンジチャンス。周囲の反対ごときで諦めてしまうことは、オーバーにいえば、和佳にとっては「今度こそ人生が終わる」ぐらいの意味があったわけです。そりゃあ守りに入っている男性たちなんて敵わないよね、という感じです(笑)。

でもよくよく見ているとこの和佳の頑張り、結果的に町のためにはなっているけど、あくまで自分のためでは?と感じてしまいます。実際和佳は、「何でそんなに頑張るんだ?」と呆れる片岡に対して、「だってもう、私がやりたくてたまらなくなっているから」と答えています。そう、この和佳、ちょっと言葉は悪いですが、自己実現のためには使えるものは何でも使う、とも言える女性だと思うのです。たとえそれが恐ろしいほどの男社会だったとしても……。