老後の親子関係で考えておきたいこと


山田:そうですね。準備でいえば、家族が突然の病気や事故にあった時のことかもしれません。それまではなんの問題もなく一人で暮らせていても、予想できない突然の事故で、急に歩けなくなる、ということはありえます。こんなときでも、たとえばお子さんは国外にいて、配偶者とも死別し、友人に頼れない方もいます。私自身、そうした場面に日々の診療で直面しています。

編集:日本でも、そうした状況になることは十分考えられますよね。

山田:急な病気や事故の場合、痛みや混乱がある状況で、「この後どうするのか、どういうサポートを利用するのか」ということを一人で判断するのは、非常に難しいことです。

編集:突然親が事故にあったりしたら、連絡を受けた子の立場としても、すごくあわてると思います。

山田:私たち医師はもちろん、ソーシャルワーカーの方なども、最善の道を探るべく対応にあたります。ですがこんな時、事前に「いざ何かがあったときのための準備」ができている方、さらにその事前準備がご家族の中で共有されていると、とてもスムーズです。

編集:なるほど。何かあったときのための話し合いをしておく、ということが大切なのですね。

山田:そうですね。たとえば「事故が起こった場合はこうする」など、ご自身やご家族の間で連絡先・サポート先のイメージができている場合、私たち医療専門職もほとんど困ることがありません。いざという時の事前準備も、個人、ご家族によって価値観は違うので、誰かの価値基準の押し付けということはできません。

編集:なるほど。たしかに親子であっても、価値観の押し付けは避けたいですよね。

山田:そうですね。突然の病気・事故に限らず、人生においてどちらか2つの選択肢から1つを選ばなくてはいけない状況というのは、おそらく何度も出てきます。
そこで大切なのはやはり、「自分にとって何が大切か」を明確にしておくことなのではないでしょうか。
何がその家族、または個人にとって最もよい選択肢なのかは、究極的にはその個人の「生きがい」からこそ見えてきます。最終的にはご自身の「最も大切なこと」をしっかりと見極め、また話し合える関係性も重要なのではないでしょうか。

編集:病気や事故のことはあまり考えたくなかったですが、目を逸らしてはいけないですね。事前準備の大切さを痛感しました。また、「親だから」「子だから」……と、価値観を押し付け合うことなく、老後や不測の事態について話し合える関係性を目指したい、と感じました。

 

<新刊紹介>
『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』

著:米マウントサイナイ医科大学 米国老年医学専門医 山田悠史
定価:本体1800円(税別)
講談社

Amazonはこちら
楽天ブックスはこちら

高齢者の2割には病気がないことを知っていますか? 今から備えればまだ間に合うかもしれません。

一方、残りの8割は少なくとも1つ以上の慢性疾患を持ち、今後、高齢者の6人に1人は認知症になるとも言われています。
これらの現実をどうしたら変えられるか、最後の10年を人の助けを借りず健康に暮らすためにはどうしたらよいのか、その答えとなるのが「5つのM」。
カナダおよび米国老年医学会が提唱し、「老年医学」の世界最高峰の病院が、高齢者診療の絶対的指針としているものです。

ニューヨーク在住の専門医が、この「5つのM」を、質の高い科学的エビデンスにのみ基づいて徹底解説。病気がなく歩ける「最高の老後」を送るために、若いうちからできることすべてを考えていきます。


写真/shutterstock
構成/新里百合子
 

 


山田悠史先生のポッドキャスト
「医者のいらないラジオ」


山田先生がニューヨークから音声で健康・医療情報をお届けしています。 
以下の各種プラットフォームで配信中(無料)です。
ぜひフォローしてみてくださいね。


Spotify
Google Podcasts
Apple Podcasts
Anchor
Voicy


リクエスト募集中!

ポッドキャストで話してほしいテーマ、先生への質問を募集しています。
番組へのご感想や先生へのメッセージもお待ちしております。
以下の「応募する」ボタンから気軽にご応募くださいね!

応募する

 


前回記事「「全国旅行支援」スタート!飛行機内での急病“ダントツ1位”に気をつけて【医師の解説】」はこちら>>