“違和感”がある時ほど話し合いを重ねる


大学卒業後、広告会社で会社勤めをしながら作家デビューを果たした今井さん。佐々木さんも役者で一本立ちをする前は広告会社に勤めていたという経歴の持ち主。同じ元“会社員”というバックグラウンドもお互いへの理解を深めるコミュニケーションに一役買っているのかもしれません。

佐々木:僕も「こうしたい」って直接伝えるほうがいいかな……。

今井:佐々木さんのおっしゃる「こうしたい」というのは、どちらかというと“違和感を伝える”ということですよね。誰よりも役をわかっている演者さんが台本に抱く違和感って、実はすごい“鉱脈”なんです。違和感を覚えるところを削るんじゃなく、じゃあ、どうやったら違和感なく成立するだろうと掘り下げることで、さらに脚本を面白くするアイデアが生まれます。

 

佐々木:あー、分かる! 分かります。「このセリフを言いたくない」とか「こうしたくない」ではないですね。セリフを言うときに感じる違和感を成立させるにはどうしたらいいかってことを考えなきゃダメなんです。

 

今井:そう思います。だから、一緒に話し合いを重ねることでさらにいいセリフが生まれてきますよね。

佐々木:なるほど。面白いですね。僕らもセリフを言い間違えたときに「なぜ言い間違えたのか」という理由を考えることで、役をさらに深めることができるし、そのセリフの意味をよく理解することができる。なぜ作家さんはこの言葉を選んだのか――、それを考えるわけです。無意識でも“違和感”を覚えているから言い間違えが起こるわけで……。

今井:そうです! 特に今回の『嘘八百』では、その違和感を直接言ってくださったのがとてもよかったと思います。

佐々木:言えるようになったってこと、ですね。