嘘の演出ではないリアルなものを。不器用でもじっくりと刻む
——今回の作品にも四季折々の美しい自然がたくさん映し出されています。そこには寒竹さんの価値観が反映されているのでしょうか?
寒竹:そうですね。四季はちゃんと描きたいと思っていました。じっくり時間をかけて撮らせて頂くことができたので、冬に雪が降るのを待つことができたし、春に花が咲くまで待つことができました。それは民放のドラマではなかなかできないですよね。私は嘘の演出に対して敏感になっていたし、なるべくリアルな自然とリアルな人間の反応を捉えたくて。雪景色の中で耳や鼻が赤らんだり、真っ白い息を吐いたり、そういうことはちゃんと映像に刻めたんじゃないかなと思います。
——仕事や私生活の先々のビジョンは描いていますか?
寒竹:先のことは何も考えていないんです(笑)。目の前の仕事に対して、精一杯取り組んで、それでみんなが喜んでくれたらいいな……ぐらいしか頭になくて。「次もある」とか一切考えてないですし、今回の作品を受け入れてもらえなかったら二度と撮れないと思ってますし。それだけ全力を出し尽くしたし、やれることはやったつもりなので、後はみなさんの反応が楽しみですよね。
そもそも先々のことを冷静に考えていたら、こんなことになってないですね。本当に私は人生設計を何もしていなくて、ちゃんとNISAとかできる人になりたいです(笑)。今でも独り身ですし、老後に一人ぼっちで死んでいくことを想像すると恐ろしいです(笑)。
Netflix シリーズ「First Love 初恋」
取材・文/浅原聡
構成/坂口彩
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