ただただ土を触り、土と向き合った時間がよかった


今井:シリーズの面白さはまさにそういうところにあって、一作だけだと“点”で終わることが、二作目をつくったときに「一作目と二作目の間に佐輔(佐々木さんの役)と則夫(中井貴一さんの役)はこんなふうに生きてきたんだ!」と思えたんですよね。同じことを今回も思いました。

佐々木:分かります。三作目に入るときに、キャラクター造形が完全にできているわけではないし、新たなストーリーをつくっていくわけですが、その前に“この二年間、佐輔と則夫がどう過ごしたか”を考えたってことですよね。

 

今井:(中井)貴一さんも同じことをおっしゃってました。佐輔は相変わらず冴えないんじゃなくて、ちょっと羽振り良くなってるんじゃないかって(笑)。そこで、今回はいい家に引っ越しして、大口注文もこなしているという設定にしました。大口注文を受けているときの佐輔のテンションの高さ、お金に目がくらんでいる陶芸家のギラギラした感じが、とても好きでしたよ(笑)。

佐々木:三作目をやると決まってから、準備期間に少しスケジュールがあったんで、陶芸の先生のところに泊まりで何度も通い、ひたすら土を触って土と向き合い続けるという時間をつくりました。それが僕の中ではとても大きくて。ドロドロになりながら作陶し、稽古終わりに、じゃあ飯食いに行こうかって。それが良かったのかな。ふたりで飲んで、先生がなぜ陶芸家になったか、今何を思っているのかとか、僕が劇団にいたときはどうだったのか、みたいな話をずーっとダラダラと話してて。

 

今井:私に電話をかけてきたときの話ですよね。蔵之介さんが酔っぱらってて(笑)、ひたすら「粘土くん!」って言うてはったのを覚えています。

佐々木:言うてましたか(笑)。あのときは「土の声を聞け」ってセリフについて話してたんですが、先生が酔っぱらってきたら「まあ、結局コイツ、喋らへんからね」って。土の声を聞け、といいつつ、「言わへんから分からへんねん」って(笑)。

今井:「土の声を聞け」というセリフから、ついに“粘土くん”というキャラクターを生み出すまで【佐輔】というキャラクターが蔵之介さんの中に入って来たのかなって思いました。そこまで陶芸家に入れ込んでくれはるんやって自分にいいように考えてましたが(笑)、ずーっと土の話をしていて、飽きませんでしたか?

佐々木:いや、むしろ昼も夜もずーっと土の話をしていたことが良かったんですよ。この役をどうしようとか、役作りではなく、先生とただただ土の話をして。今回はそれがとても貴重でした。