1300文字の中に詰まった小さな“落語”。ガラケーで始まり、今はスマホで書いてます


多忙を極める一之輔さんが自宅にいる時間は本当に僅か。最初はパソコンで書こうと思ったものの、自宅にいることは少ないと気付き、外出先で“ガラケー”を使って書き始めたそうです。

一之輔:スマホに変えたのが3年くらい前なので、半分以上はガラケーで書いたものです。ガラケーでの執筆はそんなに大変じゃなかったんですよ。電車の中で吊り革に捕まって、片手でガーっと書くんです。そうすると、周りの人が「あの人、大丈夫?」って顔で見てきたり(笑)。

 

原稿は全部で1300文字。で、僕のガラケーは横の文字数が13文字だったので100行の計算になります。それを数えながら……。今はスマホですが、電車や飛行機の中、どこでも書きますね。一気に書くタイプではなくて、300文字くらい書いては休み、放置して、また300文字くらい書く。長くなったら削って……。でもだいたい長くなるんです。いまだにどうやって書いたらいいかは分かってない。インタビュー、原稿になるんですよね? こっちこそ、文章の書き方を教えてほしいくらいです(笑)。

 

――噺家という職業柄なのか、このマクラのようなエッセイにも見事な“オチ”がついています。そこも一之輔さんのこだわりなのでしょうか?

一之輔:オチは結構気にしています。でも最近、なくてもいいかな、とも思ってます。どうしてかって? ほかの方の連載を読んでいても、案外オチってないじゃないですか? まあ、スポーツの連載で“オチをつける”必要もないんですけど……(笑)。でもオチがあったほうが気持ちいいでしょう? 1300文字もあるので、最初の5行くらいはマクラ的な気持ちで導入として書き、そこから本編があって、最後にオチがくる――。そういう構成は意識していますね。

あと、やっぱり“会話”が多いのも特徴かもしれません。落語の中の会話みたいに、カギカッコで繋げていくんです。そういうところは落語っぽいかも。まあ、カギカッコを使って進めていくと改行できるから、字数を稼げるんです(笑)。改行、改行、改行で、あっという間に1300文字埋まりますよ。


――そう笑いながら話す一之輔さん。確かに他の作家さんなどのエッセイで、会話形式メインで進むものはあまり見当たりません。それも一之輔さんが噺家であるがゆえ、なんでしょうか。

一之輔:僕はやっぱり会話調の文章を綴っていくほうがラクです。新作落語をたまに作ったりしますが、それもやはり会話劇ですからね。そっちのほうが断然、筆が進みます。

文章を書くって、どこか数学的じゃないですか? そこに理屈が存在しているんです。同じ言葉を使わないようにとか、硬い言葉ばかり繋げると硬い文章になるからバランスを取りながらとか……。毎週書いていると自分の文章のクセが分かってくるんで、嫌になります(笑)。