岸田政権が子育て支援の拡充を打ち出しています。少子化は抜き差しならない状況まで進んでおり、支援拡充は必須といってよいでしょう。しかしながら、日本の子育て環境は極めて劣悪であり、現実を見据えた政策を実施しなければ、掛け声だけに終わってしまう可能性が高いと筆者は考えます。支援策をうまく軌道に乗せるには何が必要なのでしょうか。

1月23日の衆院本会議で施政方針演説を行う岸田文雄首相。写真:つのだよしお/アフロ

日本の子育て環境が劣悪であることは、もはや多くの国民が知るところとなりましたが、問題は大きく分けて3つあります。1つめは保育施設など各種インフラが貧弱であること、2つめは日本人の所得が低下しており、経済的な事情で子供を持てない人が増えていること、3つめは社会全体として子育てに対する理解が乏しく、結果として女性にばかりシワ寄せが及んでいることです。

 

少子化問題はずっと前から指摘され続けてきたことであり、本来であれば、1〜3の施策を同時並行で進めていく必要がありました。しかしながら、現状はどれも十分とはいえず、そうしているうちに、状況は著しく悪化してしまいました。今回はある意味で最後のチャンスであり、一連の厳しい現実を見据えた上でプランを練らないと、完全に手遅れになってしまいます。

上記課題のうち3番目については、実現までに時間がかかります。ベビーカーに罵声を浴びせたり、さらには「少子化は女性の晩婚化が原因」などと、想像を絶する発言をする政治家が現実に存在しているわけですから、こうした人たちに何を言っても、もはやムダでしょう。

日本社会の意識改革が著しく遅れている以上、「子育ては女性がやるもの」という感覚を持つ人が一定数、存在していることを前提に、制度を設計する必要があると筆者は考えます(これは決して現状を変えなくてよいという意味ではありません)。

もし、社会全体で子育てを支援する風潮になっていれば、皆が時間をやり繰りできますから、保育施設などのインフラもそれを前提にしたサービスでよいと思います。しかし現実には、女性の負荷が極めて大きく、本来、夫婦が協力すれば、家庭内で対応できるレベルのことも、一部の世帯では不可能となっているかもしれません。

したがって、各種支援策はできるだけフルサービスの形で提供を行い、時間がない、あるいは家族の協力が得られないという世帯でも、心配せずに子育てができる環境を意識的に構築する必要があるでしょう。

そうなると、やはり先立つものが重要です。

 
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