老後破綻と隣り合わせの財政破綻


雇用や収入が不安定なことから、就職氷河期世代で結婚しない、子どもをもたない人たちも少なくありません。本書が紹介する総務省「国勢調査」(2020年)によれば、40代の未婚率は、男性の40〜44歳で32.2%、45〜49歳で29.9%で、3人に1人が未婚。女性は、40〜44歳で21.3%、45〜49歳で19.2%で、5人に1人が未婚となっています。さらに、2022年9月に厚生労働省が発表した「人口動態統計」では、明治32年の人口動態調査開始以来、出生数が最小を記録。婚姻件数も戦後最小となり、マスコミでも大きく取り沙汰されました。

しかしながら、しない・もたない選択をしたとしても、その後の生活が楽になるとは限りません。小林さんは、このまま就職氷河期世代の雇用問題を放置してしまえば、彼らが高齢者になった時、生活保護費が膨らみ財政破綻を招きかねないと警鐘を鳴らします。

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「かつて総合研究開発機構(NIRA)は、レポート『就職氷河期世代のきわどさ』(2008年)で就職氷河期世代を放置した場合に将来かかる生活保護費を試算している。同レポートでは、2002年時点で非正規雇用と無業者が65歳以上になった時の潜在的な老後被保険者数は77万4000人で、仮に全員が65歳から死ぬまで生活保護を満額受け取った場合に必要な追加的な予算額は、約17兆7000億~19兆3000億円だと試算している。

 

最近では、日本総研の下田裕介主任研究員が同様の試算をしている。就職氷河期世代のうち高齢貧困に陥る可能性があるのが約135万人に上り、存命のうちに生活保護を受給し続けると約27兆5000億円が必要になるという。

2022年の国家予算は、107兆6000億円。うち約2割が国債費で過去の借金と利息が占めるというなか、生活保護費が膨らめば財政破綻が余儀なくされるだろう」