鳥インフルエンザの拡大で鶏を殺処分する理由とは


山田:まず一つ目は、このウイルスの病毒性の高さです。人の間で流行しにくいとはいえ、実は人への感染例がないわけではありません。濃厚に接触するなどした場合、人に感染した例もあり、これまでも900例ほどの報告があるのです。

 

編集:なるほど。人に全く感染しない、というわけではなかったのですね。

山田:はい。そして、その方々の致死率が50%を超えている、つまり2人に1人が亡くなっているのです。これは、コロナのパンデミックの初期を思い出しても、比較にならない致死率の高さですよね。つまり、感染したら死を意識しなくてはいけない、そのぐらい高い致死率が報告されているウイルスなのです。

編集:ショッキングな数字ですね。

山田:ただし、軽症、無症状の感染が見逃されて、感染者の数は記録されているより多い可能性が高く、それゆえに実際の致死率は50%という数字より低いと考えられますが、それでも無視できないレベルの数字になるでしょう。そして、このような病毒性を持つウイルスがもし人の間で感染伝播したら、ということで、実はコロナのパンデミック以前からこのウイルスによるパンデミックが懸念されてきました。

編集:なるほど……。人の間で感染流行が起こりにくいとは言え、致死率が50%もあるとしたら、鶏の殺処分は仕方のない判断なのですね。

山田:そうですね。今までは鳥類の集団感染があり、そこから少数の哺乳類、人への感染が報告されてきました。ですがここ数年で、哺乳類の集団感染が報告されはじめたのです。去年はニュージーランドでアザラシの、スペインではミンクの集団感染が起こりました。これは見過ごせないポイントです。

編集:なぜでしょうか?