いい作品に出会えたのは運と、人と、マネージャーさんのおかげです

 

ーーこれまで数え切れないほどの作品に出られていますよね。もちろん運も必要だったかもしれませんが、それだけではない気がします。運以外に理由を探すとしたら?

え? わからないですよ、マネージャーさんのおかげじゃないでしょうか(笑)。全般的に人とのつながりです。公私とも気骨のあるいい人達に恵まれてます。僕はどちらかというと社会性はないと思うので、本当に助けられてます。

ーーそんなことは(笑)。

支離滅裂なことばっかり瞬間瞬間でやっちゃうので、何かこう、つなぎ止めてくれる人がいないとつながらなかったとは思います。友人の俳優たちや、その都度出会う人たちが救いになって「俺も頑張ろう!」と思うというか。そういう人達が周りにたくさんいらっしゃるので、僕自身極端に嘘つく必要もなく、息を吸ってられてると思います。

ーー嘘をつかない、ということは気をつけていますか。

 

いや、嘘はついちゃってるとは思うんですけどね、今も。このインタビューも。だからなんだろう、頑張る、っていうくらいのことなんですけど。「何か面白いのない?」みたいな感覚は、いつも持とうとは思ってます。

ーー少し前のインタビュー記事にあった「理想像は描かない」という言葉が印象的でした。今日お話をうかがっていても、例えば「こういう役者さんになりたい」というような、具体的な理想像はあえて持たないようにされていると感じたのですが。

なりたいと思ってもなれないですからね。誰かに対して、いいなあと思うことはありますし、もちろんリスペクトもするんですけど、それはその人なので。

 

「できない」「わからない」というところから芝居ははじまる

 

ーーでも芝居というゴールのないことを、理想や目標を持たずに続けるのってすごく大変ではないですか? 目の前のことに対するモチベーションはどこから出てくるのでしょうか。

いや、何でも、できないことから始まるので。台本もらって、そこに書いてある他人の言葉から始まる。自分の言葉ではないし、その役柄になろうと頑張ったとしても、近づいてるのか遠ざかっているのかさえわからなくなる時もある。役だったりお芝居の取っ掛かりとして、そういうところから始まる気がしてます。

その中でこう、何かの真理に触れたかもしれないなと思える瞬間が、ほんの一瞬あったりなかったりするんですよ。それが楽しくて。

ーーわからない、辿り着けないという部分が、奥野さんの場合はいい方向に作用しているということでしょうか。

悔しいのかもしれないですけどね。演じることについては、苦手意識がずっとあるので。

ーー演じることが苦手、ですか。

そうですそうです。だから、うん、カメラの前にどうやって立つの? ってところからいつも始まるので、それは楽しいです。

ーー「理想像は描かない」とおっしゃっている方に聞くのもどうかと思いますが、あえて聞かせてください。この先10年の目標は何でしょうか。例えば「大河に主役で出たい」とか。でももうやったことのない役はないんじゃないかというくらい、いろんな役を演じてこられているし、今さら「時代劇に出たい」とかもないのかな、とは思ったんですが。

えっ?! 時代劇出たいですよ!!

ーーえ、でももう出てるじゃないですか。大河も。

出たいし、まだ情報公開されてない作品でも時代劇に出演してますけど、やっぱ面白いですよ。「わー、できないな」って。

それこそ松方弘樹さんとか、すごすぎるって思ってます。時代劇でもそうですが、あれだけのスターでありながらそこらへんにいるおじいちゃんみたいな役も共感性と色気をもってスッと演じられる。それでいて『天才・元気が出るテレビ』にも出ちゃったりとか、どういう脳みそしてるんだ?! っていう(笑)。時代もあるだろうけど、どうやったらそんな人間になれるのかってことにはすごく興味があり、面白いなと思います。