日中施設で介護を受けるデイサービス


自宅で介護をする際は、自宅に来てお世話をしてくれる「訪問系サービス」に加え、施設に通う「通所系サービス」が利用できます。雅美さんのご両親が利用している「デイサービス」は通所系サービスの一部で、高齢者の社会孤立を防いだり、家族の負担を軽減するという目的で始まりました。要介護認定を受けた方が自宅での生活を継続できるよう、機能訓練や他者との交流を通して、心身機能の維持・向上を図ります。

厚生労働省が2022年末に発表した「介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、2021年10月の時点でデイサービスは全国に4万7759事業所あります。運営元は企業が53%、社会福祉法人が25%で、500ヵ所を超えるデイサービスを運営する国内最大手のツクイや380ヵ所近いデイサービスを展開するニチイなどが主な事業者。利用者1人当たりの1ヶ月の利用回数は9.4回となっています。
 

サービス内容と5つのタイプ


一般的なデイサービスでは、入浴介助、食事提供、排せつ介助、機能訓練、レクリエーション・体操、健康チェックが中心となりますが、デイサービスと言ってもその内容はさまざま。一般的なデイサービス以外に、主に以下の5つのタイプがあります。

 

①リハビリ特化型デイサービス
理学療法士や作業療法士などの専門職が在籍し、リハビリに重きを置いています。マシントレーニングを多く取り入れ、フィットネスクラブのような雰囲気のところも。1日型と半日型があり、適度な運動をしたい方や専門的な指導を受けたい方にはお勧めです。ただし食事や入浴は実施していません。

②認知症対応型デイサービス
認知症と診断された方が利用する認知症専門のデイサービスです。職員も認知症の知識を持ち、認知症特有の症状にも対応可能。自宅では入浴を拒むような方でも、職員の上手な声掛けによって入浴できるケースもあります。

③趣味特化型デイサービス
趣味を楽しむことに注力したデイサービスです。フラワーアレンジメント、エステ、ネイル、編み物といった女性に好まれるものから、絵画、書道、カラオケ、囲碁、将棋、麻雀など、さまざまなメニューがあります。中には日帰り外出を実施している事業所も。

④療養型デイサービス
医療的ケアが必要な方を対象としたデイサービスです。一般的なデイサービスの内容に加え、必要に応じて随時医療ケアを受けることができます。難病、認知症、脳血管疾患後遺症などの重度要介護者、がん末期患者、気管切開をしている方などは、看護師によるケアを受けることができるので安心です。

⑤お泊まりデイサービス
デイサービスができる施設で日中サービスを受けた後、そのまま宿泊することができます。介護保険適用外なので実費がかかりますが、急な用事でも予約が取りやすいことがメリットです。

デイサービスは自宅以外への送迎には対応していなかったり、医療行為はできないといった制限もあるため、気になることがあれば利用時に確認してみてください。

 


全国にはどんなデイサービスがある?


デイサービスは、基本的にケアマネジャーに提案された候補の中から通う施設を決めます。自宅から通える事業所は厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で検索することができるので、気になる方は事前に見ておいても良いかもしれません。

自宅から事業所まで送迎がありますが、遠方からの通いは想定しておらず、主に事業所から片道30分前後に住んでいる方が利用しています。事業所ごとにサービス提供地域が決められているので選べる施設は限られてしまいますが、趣向を凝らした施設は日本各地に数多くあります。

「たんぽぽ温泉デイサービス」愛知県一宮市
一般的なデイサービスは利用者が20〜30人ほどですが、ここは1日200人以上が集う日本最大級のデイサービス。サッカー場ほどの広さがあり、施設内を歩くだけでリハビリできるようになっています。施設内では、天然温泉やパチンコ、カジノ、カラオケ、水中エクササイズや陶芸、パン教室などが楽しめ、リハビリメニューは250種類に及びます。

「夢楽」関東エリア15事業所、関西エリア3事業所
囲碁や将棋、麻雀、カラオケなど、男性向けコンテンツが充実しているデイサービスで、実際利用者の9割が男性です。

「ワイズ・パーク」関東エリア2事業所、青森1事業所
アスレティックトレーナーの資格を持つ代表が展開するデイサービス。高齢者の介護予防と自立支援を目的に、専門的なトレーニングとエンタメ系のプログラムが受けられるアクティブシニア向けの施設です。

「カルチャースクール亀吉」神奈川県藤沢市
利用者たちが調理した料理を、併設のカフェレストランで提供する地域密着型・共生型デイサービス。利用者には、売上の一部が労働の対価として支払われています。

「ブルーミングラボ小田原浜町」神奈川県小田原市
利用者がデイサービスの利用中に行うレクリエーションで収入を得て、その報酬を施設利用料に充てるという、新しい形のデイサービス。利用者は仕事に行く感覚でデイサービスに通い、地元企業などから委託された案件を手伝っています。
 

日本デイサービス協会では、先進的な取り組みを行う事業所を選定する「デイサービス5選」を2022年より発表しています。魅力的な施設がいくつも紹介されているので、実家近くの施設がある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

〜2023年デイサービス5選〜
■株式会社ツクイ「ツクイ帯広WOW」
北海道帯広市

■株式会社3eee「カラダラボ」
北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・九州・沖縄

■Body Pioneer株式会社「リハデイnoice」
東京都江戸川区

■株式会社ソフトアップJ「エントレリハ」
大阪府

■株式会社ウェルフューチャー「桜美林ガーデンヒルズ サクラデイサービス」
東京都町田市
〜2022年デイサービス5選〜
■株式会社池田介護研究所「無添加お弁当二重まる一番町」
青森県八戸市

■株式会社ウェルフューチャー「ブルーミングラボ小田原浜町」
神奈川県小田原市

■ベストリハ株式会社「ベストリハ板橋大山」
東京都板橋区

■株式会社ワイズ・スポーツ&エンターテイメント「ワイズ・パーク」
関東・青森

■株式会社タブノキ「みんなの家タブノキ」
長野県小諸市

写真/Shutterstock
構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
編集/佐野倫子

 

 


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